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■第567回支部講演会
9月15日開催され、30名の参加者で活発な質疑応答が行われました。

 
日本動物学会北海道支部 第567回支部講演会
 
日時:2016年9月15日(木)17:00〜18:00
場所:北海道大学 理学部5号館8階813室
演題:「脊椎動物における温度センサー分子の機能的な種間多様性とその適応的な役割」
演者:齋藤 茂 先生    岡崎統合バイオサイエンスセンター(生理学研究所)・バイオセンシング研究領域・細胞生理研究部門
 
温度受容は環境温度の変動に応答し、生体の恒常性を維持するために欠かせない機構であり、動物が多様な環境に適応する際にも重要な役割を担ってきたと考えられる。温度感覚の分子機構は哺乳類を中心に解析が進み、温度感受性TRPチャネルと呼ばれる一群のイオンチャネルが温度センサーとして機能することが明らかにされてきた。これらのチャネルは温度や化学物質などの多様な刺激により活性化されるマルチモーダルなセンサー分子として機能する。中でもTRPV1とTRPA1は痛みとして感知される温度(高温や低温)および刺激性化学物質のセンサー分子として働いている。我々は、生体防御応答に重要な役割を担うこれらの温度センサーの機能特性の進化過程や適応的な役割に興味を持ち研究を進めてきた。まず、遠縁な脊椎動物種間のTRPA1の機能特性を比較し、その進化過程を推定した。TRPA1は動物の祖先種において既に高温および刺激性化学物質に対する活性を有していたが、その後に脊椎動物系統で温度感受性が変化した。この変化は、脊椎動物の祖先種において高温センサーとしてTRPV1が新たに獲得されたことと関連していると考えている。次に、異なる温度環境に適応している近縁なツメガエル種のTRPA1やTRPV1を比較した。両チャネルにおいて温度に対する感受性や活性に種間差が生じており、これらのセンサー分子の温度応答特性が生息する環境に応じて変化してきたことが示唆された。本セミナーでは温度感受性TRPチャネルの機能特性の種間差を生み出した分子基盤についても紹介する。
連絡先:北海道大学大学院・理学研究院・生物科学部門
勝 義直(ykatsu@sci.hokudai.ac.jp)
更新日:2016年9月16日

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