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■ 第554回支部講演会
日時:2015年2月13日(金) 13:00〜14:30
場所:北海道大学理学部5号館4階 5-4-07

演者:佐藤伸(岡山大学異分野融合先端研究コア)

演題:高等脊椎動物における器官再生の可能性
〜イモリ・ウーパールーパーの器官再生メカニズムは高等脊椎動物に応用できるのか?

要旨:
 再生医療の手法にはiPS細胞を使用した再生ではなく、もう一つの選択肢として「生体が本来持つ再生能力を起動する」という方法がある。生物のもつ潜在的な再生能力を引出し、器官レベルの再生を実現させることが最終的な研究の目的である。

 有尾両生類(イモリ・ウーパールーパー)は非常に高い器官再生能力を持つ。その高い再生能力は、四肢・脳・鰓・中枢神経系(脊髄)・顎など多くの器官・組織に観察される。このような高い再生能力は、進化のレベルが上がるにしたがって減退すると考えられ、ヒトなどの高等脊椎動物においては、一般的に有尾両生類で観察されるような器官レベルの再生現象を目にすることはない。進化の途上で高等脊椎動物は再生能力を失ったとすれば、それを取り戻すことは果たして可能なのであろうか?
 これに答えるには、有尾両生類の器官再生メカニズムを解き明かすことが先決である。我々は、四肢を代表例として有尾両生類の高い再生能力メカニズムの解明を目指している。有尾両生類は四肢を切断しても元通りの構造を再生できる。再生過程においては再生芽と呼ばれる構造を形成する事が必須であり、再生できない動物はこの再生芽の形成ができない。この事から、再生芽の誘導メカニズムの解明が高等脊椎動物における四肢再生の実現への第一歩であるといえるだろう。我々は、この四肢再生時における再生芽の形成メカニズムを世界的にもユニークな実験系を用いて研究している。近年、再生芽を誘導できる因子の同定に成功した。再生芽誘導の実体分子としてFGF2+FGF8+BMP7という分泌性の因子を突き止めた。この、FGFとBMPの協調的なインプットが有尾両生類において器官レベルの再生を可能にする再生メカニズムを駆動する開始インプットである。言い換えれば、上記因子は有尾両生類にとっての「器官再生薬」といえるだろう。器官レベルの再生開始を確実に起動できる因子の同定によって、今後高等脊椎動物において当該因子に対する応答能を調べることが可能になった。
 現在進行中の他のプロジェクトと、高等脊椎動物における器官再生の実現に向けての取り組みを紹介したい。

連絡先:栃内 新(706-4463st@mail.sci.hokudai.ac.jp)
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