松島俊也会員(左)と鈴木誉保氏(右)
日時:平成21年9月8日(火)17:00〜18:00 場所:北海道大学理学部5号館8階813号室 演者:鈴木 誉保氏 (理化学研究所 発生再生科学研究センター) 演題:枯葉に擬態した蛾の翅模様にみられる適応的なデザインとその進化的創出 座長:松島 俊也 出席者:約40名
講演要旨:枯葉などに似せた擬態模様は広く知られている。しかし、その理解は全くと言ってよいほど進んでいない。今回、我々は、形態測定法を用いて定量的な解析を行い、蛾の枯葉模様がもつ合理的なデザインとその進化的な創出過程について調べた。材料として、アカエグリバ(Oraesia excavata)を採用した。その前翅は、葉脈を詳細に摸した枯葉模様を呈している。定量解析により、枯葉模様は、揺らぎの小さい、かつ葉っぱとしての形を崩しにくいモジュール構造をしていることがわかった。以上の結果は、枯葉模様には自然界にて生じる変異や撹乱に対して頑健な仕組みが備わるような淘汰を受けてきたことを示唆している。さらに、進化によってどのように生じてきたのかについても調べた。その結果、擬態模様は、模様要素間の相互関係を1つ1つ段階的な変更を積み重ねることで生み出されてきたことがわかった。こうした構造は、捕食者である鳥の視覚認識を反映したものであると考えられる。併せて議論したい。
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