視覚の本質は「ものの形(輪郭)を捉えること」であり、そのために必要な情報は視覚の入り口である網膜において抽出される。脊椎動物網膜において、全ての視覚情報は双極細胞においてON型・OFF型経路に分解される。神経系のON・OFF回路は脊椎動物網膜のみならず、ショウジョウバエの視覚中枢、線虫の嗅覚・味覚、昆虫の嗅覚などにも存在し、ひとつの入力刺激に対し二つの情報経路が正反対に応答することにより微妙な変化を強調し、最適化することができる優れた回路であることが知られている。本セミナーでは、コントラスト強調に関わる網膜ON型・OFF型情報経路の流れを、ON型双極細胞の視覚伝達チャネルTRPM1とその制御メカニズムを中心に解説したい。
座長・連絡先:小川宏人 (hogawa@sci.hokudai.ac.jp)