要旨:
心臓の拍動、受精卵の発生、癌細胞の転移、キネシン等モータータンパク質の移動、リボゾームによるタンパク質の生成等、生物界には様々な「動き」 が幅広い 時間・空間スケールに渡って存在し、これらの現象と機械的「力」の相互作
用を探る研究はメカノバイオロジーとも呼ばれる。数〜数万の細胞が時間的・空間的に連動する個体発生の形態形成においては、細胞間の能動的・受動的な機械的力のやり取りが重要である。アポトーシス(プログラム細胞死)は多細胞生物の細胞で増殖制御機構として働く能動的な細胞死である事はよく知られているが、我々は、この細胞死の個体発生(特に上皮組織形成)への能動的な力学的寄与に関する研究を行っている。今回の講演では、ショウジョウバエの胚発生期と蛹発生期の上皮組織ダイナミクスを例に、アポトーシスの「力」の発生源としての役割について発表する。
(参考)
Teng, X and Toyama Y. ‘Apoptotic force: Active mechanical function of cell death during morphogenesis.’ Development, Growth & Differentiation 53, 269–276 (2011).
Toyama, Y., Peralta, X.G., Wells, A.R., Kiehart, D.P., and Edwards, G.S. ‘Apoptotic force and tissue dynamics during Drosophila embryogenesis’ Science 321, 1683 (2008).
連絡先:和多 和宏 (北海道大学大学院理学研究院生物科学部門:wada@sci.hokudai.ac.jp)