北海道支部 ホームページ
 >  > 北海道支部講演会 > ■第573回支部講演会

■第573回支部講演会
日時: 2017年6月27日(火) 17:30〜18:30
場所: 北海道大学理学部5号館8階8-13号室 
演者: 後藤 寛貴 先生  (名古屋大学・生命農学研究科・特任助教) 
演題: クワガタムシにおける大顎の性的二型の発生制御機構 
要旨: 
 性選択により進化した武器や装飾などの極端な性的二型形質は古くから生物学者の興味を惹いてきた。 シカの角やクジャクの飾り羽といった一般にも広く知られる例に加え、昆虫においても様々な分類群で多様な性的二型形質が獲得されている。例えば甲虫目コガネムシ上科では、メスをめぐる個体間闘争に用いられる様々な「武器形質」が何度も独立に進化している。コガネムシ上科における「武器の獲得」はクワガタムシの大顎やテナガコガネの前肢に代表されるような「既存形質のサイズ改変」と、カブトムシやエンマコガネの角に代表されるような「新奇形質(祖先種や近縁種に相同な器官が見られない全く新しい形質)の獲得」に大別されるが、いずれのケースでも共通しているのはこれらの形質の発現は性特異的であると同時にコンディション(栄養状態)依存的である点である。そのため、武器形質の形成と発達は性決定因子とコンディション依存的因子の両方の制御を受けると考えられるがその発生メカニズムは未知である。
 演者が材料として用いているクワガタムシでは、オス特異的に大顎の顕著な発達が見られる。この発達した大顎は餌場やメスを巡るオス同士の闘いのための武器として用いられる典型的な「性選択によって進化した形質」であり、性特異的かつコンディション依存的という典型的な特徴を示す。
 演者はこれまでクワガタの性特異的な大顎発達について、その発生機構の解明に取り組み、栄養状態を大顎発達に反映する内分泌制御機構と、性特異的な大顎発達を可能にする性決定遺伝子による制御機構、さらには栄養因子と性決定因子の発生学的リンクについて分子発生学的解析を行ってきた。本講演ではこれらのトピックを中心に、クワガタの大顎という魅力的な形態形質にまつわる話題を提供したい。
 
 
連絡先:北海道大学大学院・理学研究院・生物科学部門:和多和宏 (wada@sci.hokudai.ac.jp)

<< 戻る >>



*