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 ■第576回支部講演会

日本動物学会北海道支部 第576回支部講演会

日時:2017年8月8日() 16:30〜
場所:北海道大学理学部5号館(高層棟)8階813室
二倍体と四倍体のカエルのゲノムに刻まれた遺伝子発現調節の進化

越智 陽城
山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所

 脊椎動物は進化の過程で全ゲノム倍加を2回、硬骨魚類ではさらにもう1回ないし2回、経験したと言われている。これにより脊椎動物は最小でも遺伝子が2度にわたり倍増したため、ゲノムには基本的に同じ遺伝子が4つずつ存在することになる。ゲノムの重複で増えた遺伝子は、変異を起こして機能を失う、新しい機能を獲得する、重複した遺伝子が両方ともゲノムに残り発現が多様化するなど、遺伝子そのものの進化については詳細な研究がなされている。一方、遺伝子の倍増と同じく倍増した発現調節領域が、どのような変遷をたどり遺伝子発現の多様化をもたらしたのか、そのメカニズムを実証的に示した研究はあまりない。この問題に対して我々は、アフリカ・ツメガエルのハイスループットなトランスジェニック作製法を使い、個体内で様々な脊椎動物の発現調節領域の機能をゲノムワイドに比較することで、発現調節メカニズムの進化プロセスの解明に取り組んでいる。本セミナーでは、(1) ゲノム倍加前の祖先種に近縁なナメクジウオと2倍体のネッタイ・ツメガエルの発現調節領域の機能比較解析から我々が明らかにした、遺伝子の発現をオンにするエンハンサーの獲得だけでなく、発現をオフにするサイレンサーの獲得でも発現に多様化が起こるメカニズム(Ochi et. al., Nat. Commun., 2012)(2) 2倍体のツメガエルと4倍体のアフリカ・ツメガエルのゲノム機能の比較から、ゲノムの倍増からあまり時間を経ていない調節配列中の1塩基置換で発現を多様化させるメカニズム  (Session et. al., Nature, 2016)(Ochi et. al., Dev Biol. 2017)、について紹介する。

問合わせ先:小谷友也 (tkotani@sci.hokudai.ac.jp)


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