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■第577回支部講演会
第577回支部講演会
 
2018年2月8日(木)16:00〜17:00
北海道大学理学部5号館407室
 
ホヤが教える脊索動物の内分系・神経系の進化と多様性
 
佐竹 炎 博士(公益財団法人サントリー生命科学財団)
 
ホヤの成体は、海の中で底面に固着し、プランクトンを濾過摂食して配偶子を放出するという、非常に静的な生活史を営みます。すなわち、跳んだり跳ねたりせず、派手に変色したり擬態したりという特殊能力も持たず、これといった武装(牙、殻、毒など)も備わっていません。このような地味な性質ゆえか、受精や幼生までの発生過程が発生生物学やゲノム科学で詳細に研究されていることと対照的に、ホヤの成体が研究対象として注目されることはほとんどありませんでした。一方で、ホヤの成体は、様々なオプションを極力スリム化し、「栄養を取り込んで子孫を残す」という生物の根幹を実践することに特化しているとみなすことができます。また、ホヤは脊椎動物と共通祖先を有する姉妹群と考えられているため、ホヤの神経系や内分泌系を研究することは、ホヤの生殖や摂食などの制御機構を明らかにするとともに、脊索動物門における神経系や内分泌系の原点や進化・多様性の成り立ちを解明することにつながると期待できます。しかし、当研究所が研究する以前は、ホヤの神経系や内分泌系はほとんど研究されていませんでした。本講演会では、当研究所の研究で初めて明らかになったi) ホヤの神経ペプチド、ペプチドホルモン、並びに、その受容体の配列や分子機能、ii)ホヤの卵胞成長成熟機構とその共通性と特殊性を中心にご紹介したいと思います。また、ペプチドミクスやトランスクリプトームといった「omics」データやこれまでに蓄積された膨大な実験結果を、単なるリストやデータベースではなく、生物学的研究に活用するための新たな研究手法、特にinformaticsや質量分析を利用した方法論の開発に対する挑戦を紹介しながら、「ウェット」研究と「ドライ」研究の新しい接点や基礎生物学における展開について議論できればと考えています。
 
連絡先:木村敦(理学研究院・生殖発生生物学講座、akimura@sci.hokudai.ac.jp)

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