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■ 第533回支部講演会
         宇高寛子氏

日時: 2010年2月23日(火) 16:00〜17:00
場所: 北海道大学低温科学研究所二階講義室(215室)
演題: チャコウラナメクジの季節適応の解明
演者: 宇高寛子(うだか ひろこ)
      大阪市立大学大学院理学研究科
      生物地球系専攻代謝調節機能学研究室
座長: 片桐千仭
       北海道大学低温科学研究所
出席者: 約20人

講演要旨: 温帯に生息する変温動物がどのように季節変化に適応しているか、ということは昆虫で盛んに研究されてきた。一方、陸生軟体動物ではそのような研究は進んでいない。チャコウラナメクジは人為的移入により世界中の温帯域に広く分布しているナメクジで、日本には1950年代に移入したと考えられている。本研究ではまず、定期的な野外採集などにより、本種は大阪では11月から翌年の4月にかけて繁殖していることを明らかにした。そして、長日・高温条件が性成熟を抑制し、短日・低温条件が促進する反応をもつことで、高温に弱い卵が孵化できない時期に産卵することを避けていると考えられた。また、光周期はチャコウラナメクジの温度耐性の季節変化にも関与していることがわかった。一方、札幌では大阪よりも2カ月早い8月に性成熟が起こり、生活史に地理的な変異がみられたが、両個体群間で光周性の臨界日長に著しい違いはなかった。以上のことから、チャコウラナメクジはこれまで知られている多くの昆虫とは異なり、臨界日長の大きな変化なしに日本のさまざまな気候に対応できている可能性が考えられた。


更新日:2010年2月24日

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