平成28年度日本動物学会女性研究者奨励OM賞選考結果・受賞者要旨

女性研究者奨励OM賞授与候補者の選考について(報告)
 
                   女性研究者奨励OM賞選考委員会 委員長 真行寺千佳子
 
 平成 28年度の女性研究者奨励OM賞の授与候補者選考についてご報告致します。
 選考委員会は、真行寺千佳子(東京大学)、福井彰雅 (北海道大学)、渡辺絵理子 (山形大学)、松田学 (筑波大学)、沓掛磨也子 (産総研)、岡田令子 (静岡大学)、本川雅治 (京都大学)、竹内秀明 (岡山大学)、香月美穂 (福岡大学)の9名の選考委員により構成され、選考会議には、昨年度委員長であった窪川かおる氏(東京大学)が、オブザーバーとして参加されました。授与候補者は,各委員による事前の書面審査, および5月6日(金)に東京大学理学部2号館の323号室において選考委員全員が出席して開催された選考会議により決定されました。選考会議では、書面審査に基づく評価を参考にしながら、11名の応募者について授与候補者となりうるかを審議しました。OM賞の趣旨に基づき重視したのは、優れた動物科学の研究を推進しているだけでなく、安定した身分で研究を続けることが困難であるにもかかわらず強い意志と高い志を持って研究を継続しているか、という点です。特に、研究者としての独立性や研究姿勢,研究の取組み方、将来性にそのような意志が反映されているかを丁寧に審議しました。
 その結果、下記の通り2名の候補者を理事会に推薦することとしました。
 
         記
 
授与候補者の氏名、所属、職および、「研究テーマ」
 
太田 茜(おおた あかね)
 甲南大学大学院自然科学研究科生物科学専攻 学振RPD、非常勤講師
 「線虫の温度適応の制御機構」
 
高浪景子(たかなみけいこ)
 岡山大学大学院自然科学研究科牛窓臨海実験所 学振RPD
 「痒みの進化とその生物学的意義の解明」
 
推薦理由
 今回の応募者11名の研究内容はいずれも優れたものであり、申請書からはそれぞれの応募者の強い研究意欲を感じることができました。その中でも、候補者の太田氏と高浪氏の研究には、際立った独創性が感じられ、その成果は高く評価されました。
 候補者の太田茜氏は、手首骨の切断手術で一時右手が使えなくなるなどの困難に直面した際も、また、第1子の出産育児の間も研究活動を継続し、線虫を用いた環境温度応答の分子生理学的解析において、光感知ニューロンによる温度受容、3量体Gタンパク質による温度情報の伝達などを明らかにするという優れた業績を上げています。現在まだ学振の研究員(RPD)という不安定な立場にあり、かつ第2子の出産を控えていますが、研究に対する情熱を常に失うことなく、計画的にマイナス面を最小限にとどめ克服しようとしており、その研究姿勢が高く評価されました。
 また、もう一人の候補者の高浪景子氏は、物理工学、生命科学、医学分野で学び、現在では特に電子顕微鏡の最先端技術を習得して、その研究の幅を広げるだけでなく、深く掘り下げる努力をなさっています。痒み感覚の進化の理解を目指して、感覚の閾値制御を分子(遺伝子)・形態・行動レベルで捉えるという優れた業績を上げています。研究に常に新手法を積極的に取り入れるだけでなく、研究対象となる動物の種類を進化の視点で広げようとしている点も意欲的です。出産に際して思いもかけない病気と闘うこととなり、非正規雇用のために産休も取れずに頑張り抜かなければならなかったという、女性が研究を継続することの難しさを強靭な精神で乗り越え、優れた研究業績をあげています。直面する困難はあっても研究への情熱、意欲、責任感を持ち続け、強い意気込みで研究の継続のために努力している点が高く評価されました。
 
                           以上
OM賞受賞者要旨(太田 茜)
OM賞受賞者要旨(高浪景子)

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