平成28年度日本動物学会奨励賞の選考結果・受賞者要旨

平成28年度学会賞等選考委員会 (平成28年5月21日開催)
 赤坂甲治、浅見崇比呂、飯田 弘、井口泰泉、倉谷 滋、富岡憲治、松島俊也
 委員長 井口泰泉
 
平成28年度日本動物学会奨励賞
 本賞の全6名の応募者は、選考規程にある「活発な研究活動を行い将来の進歩発展が強く期待される若手研究者」の条件を満たしており、高い水準での選考と なった。応募者の研究内容、研究業績、将来の発展性について詳細に審議した結果、以下3名(五十音順)を理事会に推薦することとした。
 
木矢剛知(きや たけとし)
 金沢大学理工研究域自然システム学系生物学コース・准教授
 研究テーマ「神経活動依存的な遺伝子発現を利用した昆虫の生得的行動の神経基盤の解明」
 
推薦理由
 木矢剛智会員は、昆虫を対象として、分子生物学的手法により行動を制御する神経機構の解明を目指した研究を展開している。ミツバチとカイコガで神経活動依存的に発現する最初期遺伝子kakuseiとHr38をそれぞれ同定し、これらを利用して活動の生じた神経細胞を可視化する手法を開発した研究は特筆に値する。木矢会員はこの手法を用いて、ミツバチではダンス時に活動する脳領域を特定し、その神経活動が採餌飛行時の視覚経験に依存することなどを明らかにし、また、カイコガやショウジョウバエでは、雌性フェロモンに応答する雄の脳領域を包括的に明らかにするなど、優れた成果を上げている。新規に実験手法を開発し行動のメカニズムにアプローチする木矢会員の研究は高く評価することができ、将来の発展が大いに期待される。 
 
 
佐藤 淳(さとう じゅん)
 福山大学生命工学部生物工学科・准教授
 研究テーマ「哺乳類の分子系統および日本産哺乳類の起源の解明」
 
推薦理由
 佐藤淳会員は、長年の謎であったレッサーパンダや鰭脚類(アザラシ、アシカ、セイウチ)等の系統学的な位置づけや琉球諸島固有のトゲネズミ、日本固有のアカネズミ及び二ホンヤマネの系統学的位置づけなど、哺乳類の分子系統学的研究を推進するとともに、クロテンやニホンテン等のイタチ類について系統地理学的な研究を展開し、地質学的な要因と生態学的な要因が日本産イタチ類相の形成に大きな役割を果たしたことを明らかにした。また、琉球列島のトゲネズミ、対馬のツシマテン、北海道のクロテンそしてニホンヤマネを対象にして、日本列島に生息する哺乳類の遺伝的固有性及び多様性を評価することで、島に隔離された生物集団の絶滅リスクの評価を行い、哺乳類の保全遺伝学にも貢献した。さらに佐藤会員は、野生ハツカネズミの亜種間交雑に伴い生じたヘモグロビンベータ鎖遺伝子の組換えに関する研究や哺乳類の毛色関連遺伝子の多型に関する研究を行うとともに、鰭脚類の旨味受容体遺伝子が偽遺伝子化していることを発見し、食性や食べ方が偽遺伝子化に関与したという興味深い結果を発表することによって、哺乳類の分子進化学にも貢献した。加えて今後の発展を期待し、佐藤淳会員が日本動物学会奨励賞受賞者として相応しいと判断した。
 
 
二階堂雅人(にかいどう まさと)
 東京工業大学大学院生命理工学研究科生体システム専攻・准教授
 研究テーマ「脊椎動物の多様性獲得に関わる分子メカニズム解明」
 
推薦理由
 二階堂雅人会員は一貫して、脊椎動物の系統関係や適応進化機構をDNAレベルで探求し、これまでその成果は教科書や図鑑の改訂を促し、それを通じて世に広く知られるに至っている。二階堂会員はまず、散在性反復配列(SINE)の挿入パターンから、クジラにもっとも近縁である現存種がカバであることを発見、さらに多くの哺乳類の系統的位置関係に関して一連の重要な成果を報告してきた。さらに、二階堂会員は東アフリカ産シクリッドに注目し、フェロモン受容体遺伝子が過去に強い自然選択を受けたことを示した。生物多様性の遺伝的背景を明らかにした一連の研究成果を鑑み、加えて今後の発展を期待し、二階堂雅人会員が日本動物学会奨励賞受賞者として相応しいと判断した。

奨励賞受賞者要旨(木矢剛知)

奨励賞受賞者要旨(佐藤 淳)

奨励賞受賞者要旨(二階堂雅人)

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