【質問】両生類の幼生の血液循環のしくみについて
(2014.2.23掲載)


ご質問
桐蔭学園高等学校 山城友幸先生
 教科書の血管系に関する記述に、両生類が二重循環系である旨が記されております。両生類は幼生期にエラ呼吸成体時に肺呼吸と皮膚呼吸となることは中学校時代に学習します。しかし、両生類の幼生期やアホロートル(幼形成熟)の血液循環について詳細に調べると明確に記したものがなかなか見つかりません。
そこで質問なのですが、
 1つ 両生類の心臓の形態は成体と同一(2心房1心室)なのでしょうか。それとも、異なる(1心房1心室から変態とともに変化する)のでしょうか。
 2つ 心臓の形態が同一なのだとすると、血液の循環は、肺‐皮膚回路がエラを経由する形なのでしょうか、肺―皮膚回路の循環を用いず、体回路がエラを経由する形なのでしょうか。

回答1
北海道大学大学院理学研究院 自然史科学部門 栃内新
ご質問の件につきましては、英文でも少ないですから、日本語の文献は皆無と言っていい状況だと思います。私の知る限り、幼生の心臓と成体の心臓が違うという報告はありませんし、我々もアフリカツメガエルは幼生の心臓も(発生初期の形成期を除き)成体と同じ2心房1心室であることを確認しています。変態期に心臓が変わるという研究は古今東西どこにもないと思います。つまり、幼生も成体も2心房1心室です。アフリカツメガエルでは幼生のかなり早い時期から肺があり、肺呼吸もしています。また逆に、彼らは真の意味ではエラを持っておらず、口の中にある餌を濾す器官であるgill rakerというものをガス交換器としても使っていると考えられています。いずれにせよ、エラがあってもなくても皮膚呼吸と肺呼吸をするのが両生類の基本ですが、種によって幼生期に肺を持つものと持たないものがあります。
アホロートルのように「成体」でエラがあっても肺呼吸もしていますので大きな違いはありません。私の理解では幼生期のエラ呼吸は皮膚呼吸の一種だと考えられますので、エラがあれば皮膚と同様の経路でエラにも血液が供給され、なければ皮膚だけに供給するということではないかと思っています。いずれにしても、両生類は肺だけが外界とのガス交換の場ではない動物なので、心室を2つに分ける意味がない動物なのだと思います。

回答2
広島大学大学院理学研究科附属両生類研究施設 矢尾板芳郎
両生類の呼吸に関して誤解があります。幼生では鰓と皮膚であり、十分に発育した幼生では肺の関与もあります。変態した個体のガス交換は皮膚、肺、口腔で行われます。概して無尾類では肺呼吸の割合が大きく、有尾類では皮膚呼吸の割合が大きいです。有尾類ではハコネサンショウウオやアメリカサンショウウオ科では 肺を欠くものがいます。無足類のガス交換は主に肺に依存します。
1)幼生の心臓に関して変態で変化するとの報告を私は知りません。アフリカツメガエルでは幼生(第45段階、受精後4-5日で変態のずっと前)で心房中隔ができますので、この段階で2心房1心室になります。つまり、幼生と成体は少なくともアフリカツメガエルでは同じと言えます。
2)幼生の心室から出る腹大動脈からわかれる第3、4、5動脈弓は鰓に血管ループを出し、背方 で集まって左右1対の側背大動脈となり、全身に給血します。同じく心室から出る腹大動脈からわかれる第6動脈弓は肺に分布し左心房に戻ります。第6動脈弓 の一部は側背大動脈に合流します。変態の際は鰓と同様に第3、4、5動脈弓から鰓に出た血管ループは退化します。成体の無尾類では皮膚動脈が体の背・側面 の皮膚に給血しており、それは肺動脈系に属します。

回答3
東京大学分子細胞生物学研究所 小柴和子
1)両生類の心臓は、変態前から二心房一心室の形態をとります。それはヒトの胎児にも言えることで、母体の中では、肺はほとんど機能していませんが、心臓の形は、出生に先だって、二心房二心室の形がつくられます。そして両生類の場合は、変態に伴ってエラにいく血管が消失し、ヒトの場合は肺を経ずに直接大動脈に繋がる血管(動脈管)と心房の卵円孔が閉じることにより、肺循環が機能するようになります。
2)両生類の血液循環は変態に伴ってダイナミックに変化します。皮膚に血液を送ることに特化した皮膚動脈が形成されるのは、発生後期で、変態前は、肺はあまり機能していませんから、エラを通った血液が、体に流れて行くことになります。両生類の血液循環は、有尾類(イモリ、サンショウウオの仲間)か無尾類(変態に伴って尾が退縮するカエルの仲間)かでも変わってきますが、ここでは皮膚動脈を持つ無尾類について述べたいと思います。カエルの幼生期の血液の流れは、サカナとほぼ同じで、血液は全てエラを通ります。幼生期のうちに、咽頭弓動脈の最も心臓に近い血管から、肺に繋がる血管(将来の肺動脈)が分岐してきますが、このときは肺と体の両方に血液を流せる状態です。変態とともに、大動脈と繋がっていた部分が閉鎖し、皮膚動脈が形成されます。ここで、体循環と肺循環が分離することになります。咽頭弓動脈のうち、肺皮膚動脈にならない血管が、大動脈となり体循環を形成します。カエルの場合興味深いのは、効率よく皮膚に血液を送るために、肺循環の一部が肺皮膚動脈となり、分岐して、肺に血液を送る肺動脈と皮膚に血液を送る皮膚動脈に分かれていきます。皮膚には体循環からの血管も入りこんでいますし、肺が呼吸器として機能するのは、変態後からですが、皮膚呼吸は変態前から機能しているという報告もあり、カエルにとって皮膚がいかに重要な呼吸器官かがわかります。
参考文献 Kardong, KV. "Vertebrates; comparative anatomy, function, evolution (4th ed.)" McGraw Hill, 2006.

<< 戻る >>



*