第78回弘前大会に参加して
第78回弘前大会に参加して
 
九州大学大学院理学研究院生物科学部門
市川敏夫

 
 弘前大学を主会場とする動物学会第78回大会に参加した。涼しい陸奥での学会を期待して青森空港から弘前に入ったが、残念ながら会期中も平年より数度も気温が高いらしく、会場の移動だけでも汗が吹き出てきた。
会期中の3日間には一般口演とポスター発表の他、一般公募シンポジウム10題、公開シンポジウム、本部企画シンポジウム、関連集会、高校生ポスター発表があり、また会期後の9月23日(日)には一般公開の動物学広場があった。このような盛りだくさんなことを小さな大学でお世話するのは本当に大変だろうなというのが、プログラムを開いてみた時に最初に抱いた感想である。実際、人手不足だなと感じることがいくつかあった。そのひとつ、私の口演は初日の最初であったが、プロジェクターのピントがどうしても合わず、会場係の学生さんだけでは解決できなかった。4題目の口演前にプロジェクターを交換してピンボケは解消した。このようなことも各会場に責任者がいたら起こらなかったであろう。

ここ数年の動物学会で感じることであるが、シンポジウムや公開講座が多くなってきている。以前は夜間などに行われていた関連集会が昇格(?)してシンポジウムになっている。関連集会ならば主催者は会場を提供するだけでよいが、シンポジウムになると運営も主催者側の役目になり、負担が増す。シンポジウムなどが増すことそれ自体は喜ばしいことであるが、時間がタイトになり、そのしわ寄せが一般発表にきているように感じる。1年間の成果を発表したいとか、聞きたいとかが学会参加の一番大きな目的である。学生にとっても自分を磨き、アッピールする場所でもある。ポスドクが問題になっているが、「大学院生が社会で生かせる能力とは、これまで自分が研究してきた専門分野に関する知識や技術ではなく、学会発表などで経験を積んだプレゼン能力や論文制作などを通じて養われた論理的思考力にこそある」と大学院生向け就職支援サービス会社の社長がある会報に書いておられたことを思い出す。学会発表の意義は大きい。

総会は弘前城公園前の弘前文化センターで開催された。毎年出席しているわけではないが、総会で印刷された資料が配布されなくなったのはいつからであろうか。特に今年は評議員会廃止に伴う規約改正が大きな議題になった。数ページわたる予算案や規約改正案がプロジェクターで次々に映し出されただけでは十分検討を加えることもできず、承認されても何の証拠も残らない。規約改正については2人の質問者が立たれたが、時間の制限もあり、納得されたかは疑問である。また、規約改正という最も重要な案件を拍手で承認してよいかどうかという意見も聞いた。今後、評議員会がなくなると、総会の役割はますます大きくなるであろう。
来年の全国大会は私たち九州地区が担当で福岡市の福岡大学で開催する予定である。2001年の全国大会が福岡市で開催されたので、他県での開催が検討されたが、引き受け手がなく、福岡開催となったのが実情である。九州地区には弘前大学より大きい大学がいくつもあるように思う。それを考えると、弘前大学でよくぞ開催していただいたというのが正直な感想である。大会の準備はいろいろな面で本当に大変だったことでしょう。実行委員の方々に深い敬意を表したい。

弘前城の天守閣、懇親会で出されたお弁当、余興の津軽三味線の音色が思い出に残る学会であった。

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