第78回日本動物学会松江大会 高校生ポスター要旨
1. 北海道富良野地方におけるコウモリ類
北海道立富良野高等学校 科学部
富澤将平・井口令子(顧問: 美土路建)
富良野地方は北海道の中央部に位置し、 東部に十勝岳火山群、 西部に芦別岳をはじめとする日高中軸帯に囲まれた盆地である。この地方におけるコウモリの調査は詳細にはおこなわれていない。本校科学部は2003年度よりコウモリの分布調査をおこなってきた。
北海道では19種類のコウモリの生息が報告されているが、 この間の調査で7種のコウモリの生息を確認した。調査は聞き取り調査、バットディテクターによるルートセンサス、かすみ網による捕獲 (2006年度より) によりおこなった。
市内東縁に位置する鳥沼公園では5種のコウモリの採餌場所やねぐらについて調査をおこない、コンクリート製ボックスカルバートでモモジロコウモリのコロニーを発見するなど種による特徴を捉えることができた。
コウモリの反応は市内全域で捉えることができた。特に富良野市の面積の約3分の1を占める東京大学北海道演習林の周囲で、 多くの反応を捉えることができた。 2006年度より演習林内で調査を始め、鳥沼公園などの盆地内部との違いも明らかになってきた。
今回は今までの調査のまとめを報告したい。
2. 電気泳動による卵白リゾチームの精製
北海道立札幌藻岩高等学校 科学部
小林央昌・谷内颯樹・小野寺瞬・山本香緒里・荒井孝行・土釜大輔
(顧問: 野口浩史・西川浩司)
リゾチームは1922年にフレミングによって発見された抗菌タンパク質である。涙、母乳、および卵白等に広く含まれ、細菌細胞壁の多糖類に作用することが知られている。
市販鶏卵の卵白をNATIVEポリアクリルアミドゲル電気泳動した結果、大半のタンパク質は陽極側に移動したが、 一部は陰極側に移動した。 それらのタンパク質を電気泳動の原理を利用して作製した抽出装置によってゲルから抽出した。
卵白の大腸菌と納豆菌(枯草菌)に対する抗菌活性を調べたところ、納豆菌に対する活性が著しかったので、上記の抽出タンパク質を納豆菌に作用させながら精製を試みた。
本研究により、未変性状態でタンパク質を精製することの難しさや栄養分の一つとしてしか認識していなかったタンパク質の奥深さを知ることが出来たので報告する。
今回、 私たちが試みた精製方法は、 活性を視覚的に認識できればどのようなタンパク質にも応用可能であると考えるので、今後も他のタンパク質の精製に挑戦したいと考える。
3. つがる市におけるヤマコウモリの生息状況について
青森県立五所川原農林高等学校 自然科学部
太田浩弥・下山仁史(顧問: 奈良岡隆樹)
ヤマコウモリは前腕長60o前後、体重40g前後で、翼を広げた長さが約40pにもなる大型のコウモリで、青森県に生息するコウモリ類の中ではもちろん最大種だが、日本に生息する食虫性コウモリの中でも最大種といわれている。環境省絶滅危惧U類、青森県RDBBランクに指定されている希少種でもある。 休息や繁殖には大きな樹洞を利用するとされており、 このコウモリが活用する樹木をつがる市内において数ヶ所確認した。
平成17年に集中的に調査した結果、 つがる市内の三新田神社、善積地区の宇賀神社、蓮花田地区の村社天幡宮および墓地、生田地区集会所の4箇所でヤマコウモリの生息を確認した。ヤマコウモリが活用している樹木はイタヤカエデ、ヤチダモ、イチョウ、ケヤキ、ハルニレにできた樹洞であった。津軽地方にはヤチダモが多いことがわかり、それには大きな樹洞が形成されていることが多かった。確認した4箇所のうち、蓮花田地区の墓地にあるヤチダモからは平成17年8月の調査では、1本の木から169頭、平成18年8月の調査では158頭ものヤマコウモリが出巣するのを確認している。
4. つがる市屏風山地帯のニホンザリガニ生息状況について
青森県立五所川原農林高等学校 自然科学部
樋口祥也(顧問: 奈良岡隆樹)
ニホンザリガニは北海道、青森県、秋田県、岩手県だけに生息する日本固有種で、本州の生息地のほとんどは青森県に集中している。環境省レッドデータブックの絶滅危惧U類に指定されている希少種でもある。私たち五農自然科学部では,平成9年4月から津軽地域のニホンザリガニの分布と生態について調査研究を行ってきた。平成10年度からはつがる市屏風山砂丘地帯のザリガニ生息地を調査してきており、急激に生息地が減少してきていることがわかってきた。
屏風山地域の多くは防風林、スイカ、メロンなどの農地に活用されている。その中に屏風山砂丘上から流出する小渓流が孤立していくつか存在する。そこにザリガニは生息しているのであるが、孤立状に存在しているため周辺地域からの影響を受けやすく、何が原因なのかは明確ではないが、平成18年度までの調査で平成10年度に確認していた生息地の約半数が絶滅していたのである。生息地の中には人間の生活とうまく共存している箇所もあり、そのような箇所を参考に残りの生息地を保全していく必要があると考えている。
5. ストレプトカーパスに寄生したBotryosporium被害葉接触による健全葉への感染
青森県立柏木農業高等学校 農業科学科
成田祐一・赤平典耶・山谷将基(顧問:田中満)
1 動機および目的:
本校の付属農場において、ガラス温室内で栽培中のストレプトカーパスに病害が発生したので病原菌の特定や生態を詳しく調べることにした。
2 研究内容および結果:
(1)研究機関からのアドバイスにより判明したこと 〜 弘前大学農学生命科学部名誉教授・原田幸雄農学博士に御指導いただき、Botryosporiumという菌類と判明した。国内でも報告例がわずかしかなく、 完全世代も確認されていないなど生態は不詳。 岩手県内の農家で、収穫後の乾燥中の葉たばこや廃棄葉に、本菌が発生した報告例がある。
(2)分生子の顕微的観察 〜 分生子柄の先端部分をグリセリン5%溶液または水酸化カリウム0.5%溶液で簡易的に封埋しプレパラートを作成し、顕微鏡で観察し撮影した。ブドウの房のように胞子がつくことからBotryosporiumという名称になったことを観察から実感した。また、被害枝を湿室に置き分生胞子の成長を顕微鏡で観察し撮影した。
(3)完全世代の確認のための観察 〜 完全世代を確認するために、被害鉢を温室及び室内で保管し、観察を継続中である。
(4)感染実験 〜 本菌は、健全な植物体にはほとんど感染せず、根腐れ状態で生理的に弱った生育不良の株に侵入する傾向がある。切り取った健全葉に病害葉を重ね、湿室に置いたところ、感染が確認された。
6. 赤色LED夜間照明による秋菊の花芽分化抑制実証試験
青森県立柏木農業高等学校 農業科学科
比内凌・今あずさ・千葉美里・宇野華代・中山勝貴・三橋尚史(顧問:田中満)
1 研究の動機:
本校では、 平成15〜17年度、資源エネルギー庁の教育実践校に選定され、風力・太陽光発電、養鶏や花卉栽培への雪冷房活用、LED活用の実験に取り組んだ。また、平成19〜20年度は青森県知事部局主催庁内ベンチャー事業に採択され研究を続行中。LED活用の省エネルギー栽培で花芽分化抑制の実証実験をした。
2 実験材料および方法:
青色LED区、赤色LED区、青色・赤色のLEDの並列区、白熱灯区とし、 毎日 0:00〜2:00の2時間照明とした。 6月12日にセル苗からポットへの移植後直ちに照明開始。秋咲きの白菊(品種:天守閣)を使用。9月6日から1週間おきに5回にわたり普通栽培に移行した。
3 結果:
青色区では全く花芽形成抑制がないのに対し、赤色区、青色赤色並列区、白熱灯区では花芽形成が抑制され、夜間照明停止後の3〜4週目にかけて花芽が発達し、開花した。
4 考察:
秋菊の電照農家では、深夜電力と安価な白熱灯を利用しコストを抑え、開花時期を遅らせ品薄な季節に高値で販売するが、 LED使用により電力コストが白熱灯の 1/10以下で電照栽培が可能となり、今後LEDの単価が下がれば農家への普及が考えられる。
7. 採石場跡地における二次遷移の研究
青森県立八戸北高等学校 理数科
木村尊仁・尾崎潤一・沢田昇一・中島拓夢(顧問: 藤田共章)
森林の伐採や,放棄された農地など植物がいなくなり,土壌が残っている場所での植物の変遷のことを二次遷移と呼びます。昨年度から、階上町の採石場跡地において二次遷移の研究を開始しました。地学担当の先生から、調査地の写真を提供していただき変化の様子を調べました。
調査地は平成元年に採石が行われ、植物があまり見られない状態でした。平成8年には ススキ が侵入していることが確認できました。平成18年の調査ではススキ、ヤマハギ、イヌコリヤナギ、アカマツ などが見られました。各植物の高さの頻度分布を調べてみると、ヤマハギは幼木が見られず近い将来調査地から見られなくなると考えられます。 イヌコリヤナギは幼齢個体が多く、 ここ数年で成長し低木林を形成するものと予想されます。また、数個体の アカマツ の幼木が見られました。今後アカマツの個体数が増えそれらが成長していけば、イヌコリヤナギ林に続いて、アカマツ林が形成されることも考えられます。
平成19年度は次の3つのテーマ、@調査地内で イヌコリヤナギが多く見られるのはなぜか?、Aヤマハギは将来見られなくなると予想されるがそれはいつか?、Bイヌコリヤナギ、アカマツはどのような成長を遂げるのか?について調査しています。
8. ホタテ貝殻セラミックスの有用性について
青森県立八戸北高校 理数科
斎藤慶大・筒井希博・南山達哉・小山智子・中野晴日(顧問: 榎本良孝)
ホタテ貝殻セラミックス(ホタテ貝の貝殻を粉砕し、約1,000℃で焼いた粉末)の有用性を、「 野菜の鮮度保持」「 農作物(サツマイモ)の成長とカルシウム蓄積(吸収)」について調べた。
野菜の鮮度を保つためにホタテ貝殻セラミックスが有効であるか否かを確かめるため、ホウレンソウを用いて実験した。水道水を吹きかけた対照区に比べ、セラミックス液を吹きかけた方がホウレンソウの鮮度は良かった。ホタテセラミックスにはホウレンソウの鮮度を保つ効果があるようだ。ホウレンソウ以外の野菜(キュウリ、モヤシ、レタスなど)でも、セラミックス溶液が鮮度を保つのに効果があるかどうか調べていきたい。
八戸工業大学工学部・生物環境化学工学科の小山信次教授の研究室では、セラミックスを玄米に与えて発芽させ、市販品の約28倍のカルシウムを含む発芽玄米「カルシウムライス」を製品化することに成功している。玄米以外の農作物でもセラミックスを与えると農作物にカルシウムの蓄積(吸収)が促進されるのではないかと考え、サツマイモを材料とし、サツマイモの成長やカルシウム吸収に及ぼすセラミックスやホタテ貝殻粉末の影響およびpHとの関係を調べている。現在、実験継続中である。
9. 胚培養によるユリの育種および雑種判別に関する研究
岩手県立盛岡農業高等学校 ヤマユリ研究班
内山匠・工藤真太郎・藤原健太郎・藤原康太郎(顧問: 佐藤紀文)
花柱切断法および胚培養技術により、本来遠縁であるため交雑できないヤマユリ(Lilium
auratum lindl.)とサルゲンティアエ(Lilium sargentiae 中国四川省産)の雑種育成に至った。培養から5年で開花し、@花の色は「白」の「無斑点模様」、A直径約20p(大型)のヤマユリ型の花型、Bサルゲンティアエの特徴である「ムカゴ形成形質」などの特性が見られたため、自家受精や単為発生の結果できたものではなく雑種となったことが確認できた。しかし、雑種判別ができるまでの期間が長く、培養初期段階での判別技術が望まれる。
本研究ではそれぞれの細胞の核型分析を行い、雑種判別ができるか検討した。染色体の観察方法は、@コルヒチン処理(8時間)、A固定、B解離、C染色(シッフ試薬、ゲンチアナバイオレット)、D観察の手順で行った。デジタルカメラで撮影した染色体画像を用いて、染色体数、染色体長、短腕長、長腕長の相対値およびその比を算出した。その結果、ヤマユリ、サルゲンティアエ、育成種ともに染色体数は24本であったが、短腕長腕比の比較により、育成種は相同染色体のないものが6本存在する可能性が高く、この染色体はヤマユリおよびサルゲンティアエから受け継がれている可能性が高いという結果が得られた。このことから核型分析による雑種判別が期待できることがわかった。
10. ボルボックス(Volvox aureus)の生態、および培養における諸環境の影響
岩手県立水沢高等学校 理数科
伊藤駿・金野慶史郎・坂本侑哉・岩渕仁那・菊地陽・佐藤 世梨華・佐藤千夏
柴田愛里・高橋知美(顧問: 佐藤功司・畠澤秀・石井美樹子)
生物の教科書や図表に載っていたボルボックスを見て、その生態に興味を持った。生態調査を通して、ボルボックスが自然水『Volvic』でよく育つ事を知り、成長に必要な諸条件について、次の2つの実験を行った。
実験1として、明暗条件や温度条件とボルボックスの関係を調べた。その結果、ボルボックスの生育には日光が欠かせない(人工の光では増えない)こと、日光で生育したボルボックスの方が鮮明な緑色だったこと、暗所はボルボックスの生育に適さず、高温ではさらにその生育率が低下することがわかった。また、実験2として、『Volvic』以外の自然水でどのように生育するかを調べた。
その結果と実験1から、ボルボックスの生育に必要な条件として、@ Na>Mg、Ca>Mgであること、A NaとCaのどちらも、あるいはどちらかが100ml中に1mg以上含まれること、B Kの値が比較的高いこと、C 軟水であること、D 日光が当たること、E 水温が高すぎないことが考察された。
11. 大槌産イトヨの研究 ー生息状況と受精卵から成魚までの飼育ー
岩手県立大槌高等学校 自然科学同好会
田村希沙羅・阿部はるか・川端笑・倉持聡美・佐々木遥香・佐藤あゆみ・臺朋美
三浦早稀・村田菜津美・澤田瞳・鈴木望奈美・三浦好恵(顧問: 高橋啓・八尾晃)
私たちの学校がある大槌町は「自然を愛し、自然と共生する町」を目指し、熱心に取り組んでいる。この運動のシンボルになっているのがイトヨである。私たちは3年前からイトヨの里として山・河・海の総合的環境保全はいかにあるべきかを考える機会になることを願い、本研究に取り組み始めた。研究成果を小中学生や地域に発信し、一緒に環境保全活動を推進しており、大槌川源水に生息する淡水型イトヨは今年の2月に町指定の天然記念物になった。今回はイトヨの生息調査及び室内飼育の結果を報告する。
平成17年度は3回、平成18年度は8回、大槌町と大槌町河川組合の許可を得て、調査を行った。大槌産イトヨは大槌川水系源水と小鎚川水系、そして大槌湾に生息していた。室内での安定した飼育のため、冷却9連式飼育水槽等を工夫して自作した。この装置を使って生殖行動の観察、受精卵から孵化までの飼育、そして塩分濃度を変えて稚魚まで、更には成魚までの飼育を行った。
その結果、受精卵は7日目には孵化したが、自然海水の濃度に近い塩分濃度3.3%の飼育水では孵化できないか、孵化直後に死滅した。3カ月目までの生存率は塩分濃度が1%、1.5%、2%の順に高く、0%(淡水)が最も低く、105日目に全滅した。その後の成長は3つの塩分濃度による差は見られず、いずれも成魚まで飼育できた。
12. シュレーゲルアオガエル(Rhacophorus schlegelii)の孵化酵素について
山形県立上山明新館高等学校 科学部
永山美穂・石沢成美(顧問: 佐々木隆行・佐竹寿子)
動物の卵は卵を保護するためにある程度の強度を持つ卵膜・卵外被に保護されているが、それ自体は孵化する際には邪魔になる。そのため、多くの動物では孵化酵素により、卵膜・卵外被を溶解することにより、幼生が孵化することを可能にしていると考えられている。
シュレーゲルアオガエルは、モリアオガエルと同じアオガエル科アオガエル属に属している。モリアオガエルが樹上、あるいは地表に泡状の泡巣を形成するのに対し、シュレーゲルアオガエルは土中に泡巣を形成する。孵化時にはモリアオガエルと同様に泡巣が溶解することが知られている。
上山明新館高校科学部では、これまでの研究で、モリアオガエルの孵化時における、泡巣を溶解する成分の採取に成功している。同様の方法でシュレーゲルアオガエルの泡巣を溶解する成分の採取を試み、採取に成功した。採取した溶解液を電気泳動し、CBB染色した結果、タンパク質の幾つかのバンドが確認された。また、孵化酵素の性質について幾つかの実験を行い、同属のモリアオガエルとの比較を行った。
13. モリアオガエル(Rhacophorus arboreus)の孵化酵素について
山形県立上山明新館高等学校 科学部
片山晴子・吉田美咲・向田智美・永山美穂(顧問: 佐々木隆行・佐竹寿子)
動物の卵は卵を保護するためにある程度の強度を持つ卵膜・卵外被に保護されているが、それ自体は孵化する際には邪魔になる。そのため、多くの動物では、孵化酵素により、卵膜・卵外被を溶解することにより、幼生が孵化することを可能にしていると考えられている。
モリアオガエルは、アオガエル科アオガエル属の日本特産種である。各地で天然記念物に指定されているが、山地ではそれほど珍しいカエルではない。近隣では岩手県や福島県に国指定の地域がある。山形県内では鳥海山で県の指定地域があり、山形県では準絶滅危惧種(NT)に指定されている。モリアオガエルは樹上、あるいは地表に泡状の泡巣を形成することが知られており、孵化時には泡巣が溶解することが知られている。
上山明新館高校科学部では、これまでの研究で、モリアオガエルの孵化時における、泡巣を溶解する成分を採取することに成功している。採取した溶解液を電気泳動し、CBB染色した結果、タンパク質の幾つかのバンドが確認された。また、既に明らかにされている他種との比較を行うため、モリアオガエルの孵化酵素の性質について幾つかの実験を行った。
14. モリアオガエル(Rhacophorus arboreus)の泡巣の役割について
山形県立上山明新館高等学校 科学部
石沢成美・永山美穂(顧問: 佐々木隆行・佐竹寿子)
両生類の生殖方法は実に多様であり、産卵形態や配偶子も実に様々である。卵は卵を保護するためにある程度の強度を持つ卵膜・卵外被に保護されている。また、卵膜・卵外被には卵の保護の他にも、水分の保持や受精に関わる様々な物質を保持する役割があると考えられている。モリアオガエルは両生類無尾目アオガエル科に属する日本特産種である。モリアオガエルは樹上、あるいは地表に泡状の泡巣を形成することが知られている。今回、モリアオガエルの泡巣の役割について注目し実験を行った。
モリアオガエルの卵と泡巣を分離し、卵のみと卵と泡巣の場合で孵化の速度を比較したところ、泡巣がある方が孵化が速かった。また、0.1mMのEDTAを使用した場合、孵化率の低下が観察された。孵化後の幼生とEDTA濃度の関係を調べたが、0.1mMのEDTAでは24時間以内の影響は表れなかった。
幾つかの種の孵化酵素はEDTAにより活性が低下し、酵素活性にZnが関係することが知られている。モリアオガエルの孵化酵素においても、EDTAでキレートされる金属が酵素活性に関わっており、その金属は泡巣内に保持されている可能性が示唆された。
15. ウキゴリ類の生態調査 〜棲息地の違いについての研究〜
山形県立加茂水産高等学校 水産生物部
鈴木崇大・影澤琢見・工藤壮太・工藤祐樹(顧問: 本間伸栄・三島康裕)
ウキゴリ類は、「ウキゴリ」「スミウキゴリ」「シマウキゴリ」の3種からなり、近年まで同一種とされ、「淡水型(現在のウキゴリ)」「中流型(シマウキゴリ)」「汽水型(スミウキゴリ)」として扱かわれてきた。今回調査した河川では、スミウキゴリとシマウキゴリが多く捕獲されている。また、それらは(図鑑等によると)同じ河川に生息している場合には「棲み分け」をしていることが知られている。そこで、スミウキゴリとシマウキゴリの棲み分けに関する調査・研究を行った。
調査では、河口から上流にかけて、滝・堰堤等の大きな障害物があると、そこを境に上流域にスミウキゴリ、下流域にシマウキゴリが棲息しているという事がわかった。しかし、図鑑等との相違点も判明し、下流域にいるはずのスミウキゴリが上流域に、上流域にいるはずのシマウキゴリが下流域に棲息していた。そこで、棲み分け要因について調べるために仮説を立てて検証した。結果、スミウキゴリの遡上能力が高いことが棲み分けの要因として示唆された。これは堰堤の上流域にスミウキゴリが多くいるというフィールド調査の結果との合理性を持っている。
16. 淡水産腹足類(軟体動物)の発生の観察
新潟県立新津高等学校 生物部
山本 文(顧問: 田村一利)
淡水産の軟体動物の中で、代表的な腹足類である、モノアラガイ、タニシ、カワニナ、ヒラマキミズマイマイ、カワコザラの5種類についての初期発生を観察し、記録して比較した。主に、新潟県新潟市秋葉区のため池や小川、水田から採集し、小型の実体顕微鏡と光学顕微鏡で観察した。これらの種は系統的な関係については近縁ではないが、淡水中に多くみかけることができる身近な軟体動物であり、発生の観察のなかで、これらの生活や進化について考察してみた。従来から教材として使用することの意義について検討されており、発生についての理解を増進するとともに、淡水での生活への適応ということにも焦点をあてて観察してみた。
結果は主に発生を部分的に記載したものになってしまったが、飼育方法や観察方法について検討し、今後詳細な観察結果をもとにしてさらに研究を深める予定である。
17. 淡水海綿2種の分類に関する研究
新潟県立新津高等学校 生物部
市川諒(顧問: 田村一利)
本年(2007年)4月から7月にかけて新潟市秋葉区(旧 新津市)朝日のため池の排水溝より採集した海綿を観察・記録した。また、2003年に、群馬県利根郡新治村(現 水上町)入須川の通称、小池沼において採集した海綿についても観察・記録した。これらの海綿は佐々木(1982、1934、1936)によればミュラーカイメン(Ephydatia mulleri (Lieberkuhn,1855))とミュラーカイメンモドキ(Ephydatia japonica (Hilgendorf,1882))であるとされるが、その後、向井(1980)によってミュラーカイメンの変異であるカワリミュラーカイメン(Ephydatia mulleri var. Japonica (Hilgendorf))であると報告されており、この2地域から採集したタンスイカイメンの標本についてその骨片を中心に検討し、これらのカイメンの分類に関する研究をおこなった。
水槽内に芽球を含んだ群体を入れておいたら芽球の発芽が観察された、芽球の観察についても報告する。
18. 校地内のコケについての研究
新潟県立新津高等学校 生物部
大杉周(顧問:田村一利)
新津高校は新潟市内にあり、日本海側の都市の郊外にある。海側は対馬暖流の影響で照葉樹林が発達し山側ではブナ林帯になっている。新津高校は照葉樹林帯とブナ林との境界線あたりに位置している。校地内を20ヶ所に区分し、そこに生育しているコケを分類同定した。約22種類のコケの存在を確認し、コケの種類構成によって校地内をコケによって類型化した。文献に記録されているコケの性質と校地内の環境の観察から、類型化と環境要因についての仮説を作成した。今後、このコケ群集と土壌動物、環境(特に水分)との関連性について検討していきたい。
19. ミスジマイマイにおける天気と位置に関する研究
神奈川県大井町立湘光中学校*・神奈川県立西湘高等学校
大津将矢*・大津拓紘
オナジマイマイ、ウスカワマイマイ、ミスジマイマイによるこれまでの研究から、カタツムリの位置が気圧と関係していることが分かった。 更に、天気との関係から明るさや温度による依存性についての関心が高まった。そこで、天気との関係を調べるため、 明るさについての実験を行なった。また、詳しく、気圧、温度、湿度の関係を調べるため、回帰分析という手法を使って解析を行った。その結果、下記のことが明らかになった。
(1)カタツムリの位置と明るさとの関係について実験を行った結果、明るさにかかわらずほぼ同様の動きを示した。これより、明るさには大きく依存していないことが分かった。
(2)位置、気圧、温度、湿度、天気による回帰分析を行った結果、気圧と温度と湿度の関係があることが明らかになった。 そこで、それらの影響を考慮した解析式の場合と、気圧のみの場合を比較した結果、位置との関係が大きくなることが分かった。
温度は、気圧や湿度に影響するものであり、温度による影響が室内実験の結果として示された。 天気は、明るさ、気圧、温度、湿度等多くの変化を伴う現象であり、その中でそれらを感じる生物の行動は興味深い。
参考文献
[1] 大津拓紘:“カタツムリの天気予報に関する研究” 第76回日本動物学会高校生ポスター R01 (2005)
[2] 大津拓紘・大津将矢:“ミスジマイマイにおける位置と天気の関係” 第77回日本動物学会高校生ポスター P012 (2006)
20. 外来種タイワンシジミ調査から考える地域の観測者としての高校生物部の役割
私立向上高等学校 生物部
長島拓也・土屋雄樹・落合進也・渡邊琳太郎・富沢拓人(顧問: 園原哲司)
1999年、神奈川県伊勢原市石田の3面コンクリート農業用排水路で、外来種のタイワンシジミ(カネツケシジミ型:Corbicula fluminea f.insularis)の生息を神奈川県内で初めて確認して以来、神奈川、山梨両県でシジミ類の分布調査を継続してきた。その結果、タイワンシジミの驚異的な分布拡大と、マシジミの絶滅を危惧すべき状況が明らかになった。さらに、ホタル保護活動をはじめとする自然保護活動によって、外来種のタイワンシジミが分布を拡大している事例も複数確認された。
2年間にわたる『桂川・相模川流域協議会』との合同シジミ類調査、全国の内水面試験場との情報交換によるタイワンシジミの分布情報収集等、情報ネットワークを通じて活動の輪を広げてきた。そうした活動を通じて、希少種のニホンミズシタダミと出会い、特定外来生物カワヒバリガイの東日本での生息情報もいち早くキャッチした。高校の生物部が地域との協働の中で、地域の観測者としてどのような役割を担えるか、8年間の活動を総括したい。
21. ブレファリズマの細胞サイズ変化の解明への試み
奈良女子大学附属中等教育学校 SSH生徒研究会生物班
中澤春香・永井伸明(顧問: 櫻井昭)
ブレファリズマは、 淡水生の繊毛虫の一種であり、体長約300μmで赤い色素をもっている。体細胞分裂をして増殖し、大核と小核という2つの核をもつ。そしてもう一つ、大変興味深い特徴として、飢餓状態におかれたときに共食いが見られ、その後細胞サイズが巨大化する事が知られている(本研究において、巨大化したブレファリズマをジャイアントブレファリズマとする)。しかし、この現象についていまだ詳しく調べられていない。そこで本研究では、ジャイアントブレファリズマがどのようにできるのか調べることにした。そして、DAPI染色による大核観察とサイズ測定から、ジャイアントブレファリズマの大核サイズが大きくなっている事を突き止めた。さらに細胞サイズの巨大化と大核の関係について調べる為、人為的にブレファリズマの大核量を増やし、それによって生じる細胞サイズの変化を見る実験を行った。又、ジャイアントブレファリズマが巨大な細胞サイズを保っていられる条件を調べるため、ブレファリズマを培養する溶液に着目し、ジャイアントブレファリズマの細胞浮遊液がジャイアントブレファリズマの細胞サイズに影響しているのか検討を行った。
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