沼田 英治
深津武馬さんの後任として、2020年1月1日にZoological ScienceのEditor-in-Chiefに就任しました。本誌が1984年に発刊されてから、すでに36年経過しました。この間、本誌が動物学分野の国際学術雑誌の地位を保ってこられたのは、日本動物学会の先人たちの献身的なご努力があったおかげだと思います。わたし自身も微力ながら2002~2004年にEditor-in-Chief鈴木範男さん、道端齊さんのもとで、2007年~2010年に岡良隆さんのもとで、Division Editor、Reviewing Editor(現在のAssociate Editorに相当する)を務めました。そして、今回Editor-in-Chiefとして久しぶりに編集に携わることになりました。編集委員会として、5名のAssociate Editor(柁原宏さん、北野潤さん、田中幹子さん、二階堂雅人さん、兵藤晋さん)に留任していただき、新たに5名(志賀向子さん、中野隆文さん、三浦徹さん、吉田学さん、依田憲さん)に加わっていただきました。Editorial Assistantは松林有理さんです。従来と比べると少人数になりますが、きめ細やかで一貫性のある対応をしたいと考えています。
新しい編集委員会が発足したからと特別なことをする気持ちはありません。先人たちが築いてくださった地位をこれからも保つことが第一の目標です。一方で、この36年間に学術出版をめぐる内外の激しい動きがあり、現在も変化しつつあります。わたしが初めて編集を担当した当時は紙の原稿や査読レポートを郵便でやり取りしていましたが、現在では電子投稿システムが動いています。そして、編集のやり方以外にも大きな変化がありました。もっとも大きな変化は、2015年に日本動物学会がもうひとつの学術雑誌Zoological Lettersを発刊したことです。Zoological LettersはZoological Scienceと同様に広く動物学を対象とする国際学術雑誌ですが、印刷体のない電子ジャーナルで、すべての掲載論文がオープンアクセスであるなど、雑誌としての性格は異なります。したがってZoological Scienceらしい論文は何かということを、かつて以上に意識せざるを得ませんし、Zoological Lettersと双方が発展するような連携も必要となってくるでしょう。
わたしが初めて編集に関わった2002年発行のZoological Scienceで、掲載論文が一番多かった分野はPhysiologyとEndocrinologyで同数、両者を合わせると全体の27%を占めていました。ところが、2019年にはDiversity and Evolution、Ecologyが上位となり、これらを合わせると全体の39%、一方でPhysiologyとEndocrinologyは合わせて9%にまで減りました。人気のある学問分野が変遷することもあるでしょうし、投稿先にZoological Scienceをあまり選ばない分野もあるでしょう。それにしても、この変化は少し極端ですし、学会大会では演題数の少ないEcology分野の論文が多いのも驚くべきことです。現在掲載論文の多い分野のさらなる投稿にももちろん期待しますが、かつてZoological Scienceを支えていた分野からの投稿を取り戻す方策も考えたいと思います。
最後にひとつ、よいお知らせがあります。従来からZoological Scienceの問題点として、発行前公開の問題が挙げられていました。多くの雑誌が、Early View、Online Firstなどの名称で印刷体の正式刊行前に電子版を公開しています。本誌では長くこれができないでいましたが、2016年よりZoodiversity Web上で出版前の原稿をEarly Viewとして公開するという、やや込み入った方法で対処してきました。ようやく、Zoological Science のウェブサイトで出版前の原稿をIssue-In-Progressという名称で公開することが決まりました。これにより、著者、読者双方の利便が図られるだけではなく、出版後早い時期の引用が増えてインパクトファクターの上昇にもつながるはずです。