2015年度論文賞

日本動物学会理事会は、ZS編集委員会による審議を経て推薦された候補論文について審議を行い、以下の5論文に対してZoological Science Award 2015を授与することを決定いたしました。

【選考経過報告】

2015年4月9日にZoological ScienceのAssociate Editors 14名、Advisory Board Members 33名に候補論文の推薦(2014年に発表された論文のうち3編程度まで、推薦〆切5月22日)をe-mailで依頼した。5月22日までにEditor-in-Chief 1名、Associate Editors 14名、Advisory Board Members 3名より計49件、重複を除き30編の論文が推薦された。この推薦論文リストに基づきEditor-in-ChiefとAssociate Editorsで、多数の推薦を受けたもの、科学的内容の妥当性と重要性、動物学への顕著な貢献などに基づいて審査をおこない、以下の5論文を授賞論文候補として理事会に報告する。

【受賞論文】

Rhinoceros Beetles Suffer Male-Biased Predation by Mammalian and Avian Predators
Wataru Kojima, Shinji Sugiura, Hiroshi Makihara, Yukio Ishikawa and Takuma Takanashi
Zoological Science 31(3): 109–115
オスで発達した性的二型を示す装飾物は、性淘汰の観点からは有利だが生存には不利であると解釈されるのが一般的である。しかしながら、装飾物が生存に不利であることを示した研究は少ない。筆者たちは、日本に生息するカブトムシについて、野外調査と野外実験を実施することによって、オスの方が捕食圧が高いことを示すデータを報告した。また、主要な捕食者も同定した。これは、装飾を持つオスの方が生存にとって不利であるという仮説と合致しており、日本人にとって親しみ深いカブトムシの角の進化機構を理解する上での貴重な基盤情報である。

Sea Lily Muscle Lacks a Troponin-Regulatory System, While it Contains Paramyosin.
Takashi Obinata, Shonan Amemiya, Ryosuke Takai, Muneyoshi Ichikawa, Yoko Y. Toyoshima and Naruki Sato.
Zoological Science 31(3): 122–128
トロポニンは横紋筋の収縮調節タンパク質で脊索動物や旧口動物には存在するがウニやナマコなど棘皮動物には存在しない。本論文は、現存で最も原始的と言われるウミユリにおいてトロポニンが存在しないことを確かめた論文である。同時に、脊索動物以上には存在しない筋タンパク質であるパラミオシンが旧口動物とともにウミユリにも存在することも明らかになった。棘皮動物が新口動物でありながらも特有の筋タンパク質組成をもつことを示した興味深い論文である。

Segment Regeneration in the Vestimentiferan Tubeworm, Lamellibrachia satsuma
Norio Miyamoto, Ayuta Shinozaki and Yoshihiro Fujiwara
Zoological Science 31(8): 535–541
ユニークなボディープランをもつチューブワームの再生過程を詳細に観察し、再生過程におけるengrailed遺伝子の発現パターンを調べた研究。チューブワームの再生研究の基礎を築き、Lamellibrachia satsumaを、再生の進化とチューブワームのボディープランを研究するうえでのモデルシステムとした重要な論文である。

“Double-Trick” Visual and Chemical Mimicry by the Juvenile Orchid Mantis Hymenopus coronatus used in Predation of the Oriental Honeybee Apis cerana
Takafumi Mizuno, Susumu Yamaguchi, Ichiro Yamamoto, Ryohei Yamaoka and Toshiharu Akino
Zoological Science 31(12): 795–801
ハナカマキリという極めて興味深い進化を遂げた昆虫の持つ驚くべき特徴を解明した研究である。本種の幼虫がランの花に擬態することはよく知られているが、本研究では、本種がその外見をランの花弁に似せるだけでなく、化学物質(3HOA, 10HDA)を放出してミツバチを正面に誘導し、捕食していることを明らかにした。

Unraveling a 70-Year-Old Taxonomic Puzzle: Redefining the Genus Ikedosoma (Annelida: Echiura) on the Basis of Morphological and Molecular Analyses
Masaatsu Tanaka, Takeshi Kon and Teruaki Nishikawa
Zoological Science 31(12): 849–861
70年にわたって分類学的な謎とされてきたユメユムシ属(環形動物門・ユムシ類)の同一性を、タイプ種と同属他種のタイプ標本だけでなく、トポタイプを含む新標本の詳細な形態観察と分子系統解析により明らかにし、タテジマユムシ属との判別形質を発見した秀作。

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