2013年度論文賞

2013年6月11日 掲載

日本動物学会理事会は、ZS編集委員会による審議を経て、理事会へ推薦されたZoological  Science Award 2013の各論文について審議を行い、下記のように賞を決定しました。これら8編の論文は併せて「藤井賞」を受賞し、各論文に3万円の賞金が授与されます。

Zoological Science Award 2013

Michio Sugahara, Yasuichiro Nishimura, and Fumio Sakamoto
Differences in heat sensitivity between Japanese honeybees and hornets under high carbon dioxide and humidity conditions inside bee balls.
29: 30-36
ニホンミツバチがスズメバチ類を撃退するためにつくる蜂球に関する論文。これまでの研究から、蜂球内の温度とCO2濃度の上昇がスズメバチを死に至らしめる要因ではないかと考えられていた。本研究では4種のスズメバチ、ニホンミツバチ、セイヨウミツバチを用いて、ニホンミツバチがスズメバチに対して形成する蜂球内の環境を解析することにより、CO2濃度と湿度の上昇がスズメバチの熱耐性に影響する可能性について言及している。

Hiroki Hata, Rieko Takahashi, Hiroshi Ashiwa, Satoshi Awata, Tomohiro Takeyama, Masanori Kohda and Michio Hori
Inheritance Patterns of Lateral Dimorphism Examined through Breeding Experiments in Tanganyikan Cichlid (Julidochromis transcriptus) and Japanese Medaka (Oryzias latipes)
29:49-53
タンガニーカシクリッド(Julidochromis transcriptus)とメダカ(Oryzias latipes)を用いて交配実験により口吻部の左右性の遺伝様式を調べ、lefty allele がrighty alleleに対して優性であり、単純なメンデル遺伝を示すことを明らかにした論文である。左右性という形質が系統的に離れた種においても類似の遺伝様式をとることを示したこの研究は、左右性の表現型多型が生ずる遺伝学的メカニズムを探る第一歩として、興味深く重要な論文である。

Kyoko Kamiya, Keiji Yamashita, Toshiharu Yanagawa, Toyoki Kawabata and Kenji Watanabe
Cypris Larvae (Cirripedia: Balanomorpha) Display Auto-Fluorescence in Nearly Species-Specific Patterns
29: 247–253
フジツボ類は船底や港湾施設の汚損生物であり、遊泳する幼生が基質に着底するキプリス段階での簡便かつ正確な種同定法が求められてきた。本研究は第一著者の博士論文研究の一部であり、キプリス幼生の自家蛍光パターンが種判別に有用であることを報告した画期的論文である。この技術はフジツボ類だけでなく他の小形動物にも転用できる可能性を秘めており、今後の応用研究が期待される。

Kazuya Kobayashi, Takanobu Maezawa, Haruka Nakagawa and Motonori Hoshi
Existence of Two Sexual Races in the Planarian Species Switching between Asexual and Sexual Reproduction
29: 265-272
プラナリアの同一種の中に、有性生殖しか行うことが出来ない個体と無性生殖へも転換できる個体が存在することを実験によって見事に示した論文である。独自の実験系を利用して、性の進化や転換という動物学の根本課題に迫るというアプローチは、まさに動物学の醍醐味であり、今後の分子基盤の研究などへの発展も大いに期待されることから論文賞にふさわしいと考えられる。

Nahid Sultana Lucky, Ryo Ihara, Kosaku Yamaoka and Michio Hori
Behavioral Laterality and Morphological Asymmetry in the Cuttlefish, Sepia lycidas
29: 286–292
コウイカの甲形態に左右性の違いがあり、その左右性とコウイカの補食行動の左右性(右から獲物を捕獲するか左から捕獲するのか)が正に相関することを示したこの論文は、研究例の少ない無脊椎動物における左右性多型とその進化的意味について形態と行動の2つの側面から挑んだ興味深い研究である。

Makoto Urata, Sadaharu Iwasaki and Susumu Ohtsuka
Biology of the Swimming Acorn Worm Glandiceps hacksi from the Seto Inland Sea of Japan
29: 305-310
筆頭著者はこれまでギボシムシに関する系統・分類・発生・進化・生態といった幅広い分野にわたる総合的な自然史科学を推進しており、後口動物の進化を考える上で極めて重要なこの群に関する動物学的知見の増進に大きく寄与してきた。本研究で著者らは瀬戸内海の小久野島(「こぐのしま」乃至「こくのじま」)で発見したハネナシギボシムシを2年間にわたって定期採集し、詳細な飼育観察に基づいてその行動・生態を明らかにした。恐らく将来にわたってこの分野の教科書に引用され続けるであろう好論文である。

Shohei Komaki, Atsushi Kurabayashi, Mohammed Mafizul Islam, Koji Tojo, and Masayuki Sumida
Distributional Change and Epidemic Introgression in Overlapping Areas of Japanese Pond Frog Species Over 30 Years
29: 351-358
本論文は、日本中部における日本産の3種のトノサマガエル類の移入雑種形成と、生息域による移入交雑過程の違いを示したものである。筆者らは、松本盆地と伊那盆地の30地点から合計233個体を採集し、それらに対するアロザイム解析とmtDNA解析により、近接した2つの盆地間が接している地域での交雑、移入、特定種集団の消滅過程と地域による相違を示した。近縁種による交雑により従来の固有種集団が過去30年に縮小化し、今後消滅していく将来予測にも言及した重要な論文である。

Tomoe Hikosaka-Katayama, Kanae Koike, Hiroshi Yamashita, Akira Hikosaka, and Kazuhiko Koike
Mechanisms of Maternal Inheritance of Dinoflagellate Symbionts in the Acoelomorph Worm Waminoa litus
29: 559-567
2種の渦鞭毛藻と共生する無腸動物Waminoa litusについて、共生藻の卵への垂直伝播過程を組織学的に詳細に記載した論文である。無腸動物という系統進化的に興味深い生物を継続的に飼育維持しておこなった本研究は、左右相称動物では共生渦鞭毛藻の垂直伝播がきわめて例外的なこともあり、貴重な生物学的知見を提示するものである。

以上

動物学会事務局

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