2007年度論文賞

更新日:2009年2月10日

平成18年度Zoological Science 編集委員会(長濱嘉孝委員長)は、平成19年度 ZOOLOGICAL SCIENCE AWARD 候補論文を決定し、理事会・評議員会は、その提案を受け、審議した結果、平成19年度ZOOLOGICAL SCIENCE AWARD を下記のように決定いたしました。

ZOOLOGICAL SCIENCE AWARD

1) Section: Reproductive Biology
Induction of Female-to-male Sex Change in the Honeycomb Grouper (Epinephelus merra) by 11-ketotestosterone Treatments.
Ramji K. Bhandari, Mohammad A. Alam, Kiyoshi Soyano and Masaru Nakamura
Zoological Science 23 (1): 65-69 (2006)
ハタは雌から雄へ性転換する。この性転換の内分泌調節機構を解明するために、雌に魚の天然の雄性ホルモンである11-ケトテストステロン処理を行った。処理した全ての個体の卵巣は成熟した精巣を持つ雄へと転換することを明らかにした。この雄の精子は、正常雌の成熟卵と受精することを証明した。このように本論文は性転換に雄性ホルモンが重要な働きをしていることを明らかにした価値の高い論文である。さらに魚類養殖への応用にも貢献するものである。

2) Section: Ecology
Long Tails Affect Swimming Performance and Habitat Choice in the Male Guppy.
Kenji Karino, Kazuhiro Orita and Aya Sato
Zoological Science 23 (3): 255-260 (2006)
淡水魚グッピーの雄に著しい派手な色彩模様と長い尾鰭は、性淘汰で進化した性的二型のモデルとして研究されてきた。だが、進化生態学の領域で理論的に仮定される繁殖上の利益と生存上のコストは、確たる実測がことのほか難しい。この論文で著者らは、単に信じられてきただけの、長い尾鰭にかかるコストと生息微小環境との相互作用を、人工・自然条件下で明解な測定値により初めて立証した。教科書に長く引用されることだろう。

3) Section: Animal Diversity and Evolution
Round-trip Catadromous Migration in a Japanese Amphipod, Sternomoera rhyaca (Gammaridea: Eusiridae).
Keiko Kuribayashi, Haruo Katakura, Masaki Kyono, Matthew H. Dick and Shunsuke F. Mawatari
Zoological Science 23 (9): 763-774 (2006)
本論文は、分類学の遂行中に遭遇した興味深いヨコエビの行動を進化的に考察したもので、手法が新しいわけでもないが、わくわくさせられる論文である。対象分類群こそ違え、分類学は種記載論文、系統学はDNA配列比較という決まり切った論文の多い中、本論文は、かつての「動雑」を思わせるような、野外研究における発見の醍醐味を十分に表現した論文であり、完成度も高い。

4) Section: Developmental Biology
Early Development of Zooxanthella-containing Eggs of the Corals Porites cylindrica and Montipora digitata: The Endodermal Localization of Zooxanthellae.
Mamiko Hirose and Michio Hidaka
Zoological Science 23 (10): 873-881 (2006)
著者らはサンゴ類における褐虫藻共生の動態、それも個体発生過程における共生開始の機構を知るため、サンゴの2種Porites cylindricaとMontipora digitataの初期発生における褐虫藻の分布を詳細に検索した。その結果、褐虫藻の分布機構は原腸形成機構のタイプと連関して種レベルの違いを示すことが示された。比較動物学的にきわめて質の高い、興味深い論文である。

5) Section: Animal Diversity and Evolution
Time Scale for Cyclostome Evolution Inferred with a Phylogenetic Diagnosis of Hagfish and Lamprey cDNA Sequences.
Shigehiro Kuraku and Shigeru Kuratani
Zoological Science 23 (12): 1053-1064 (2006)
本論文は円口類の進化におけるタイムスケールについてメクラウナギとヤツメウナギのcDNA配列情報をもとにイン・シリコの解析を用いて進化学的考察を加えたものである。この考察から、両者が円口類の共通祖先系が無顎類の系譜から別れた直後に比較的早く分岐したという結論を導いている。この研究は動物学的に見て重要な円口類の進化という大問題に新たな方法論を持って鋭く切り込むものとして高く評価される。

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