2006年度論文賞

更新日:2009年2月10日

Animal Diversity and Evolution
Title: Hybrid Male Sterility between the Fresh- and Brackish-water Types of Ninespine Stickleback Pungitius pungitius (Pisces, Gasterosteidae)
Authors: Hiroshi Takahashi, Terumi Nagai and Akira Goto
Zoological Science 22 (1): 35-40
推薦理由:本研究は、日本産イバラトミヨの汽水型と淡水型の交雑実験により、雑種♂のみが必ず不妊となること、その性依存の雑種崩壊が精子形成の異常により生じていることを明らかにした。トゲウオ類では、互いに急速に分化した生態型が平行種分化する実例の研究モデルとして世界的に知られている。そのトゲウオ類で初めて、性依存の雑種崩壊を発見し、そのメカニズムを確証した点で新規性が高く、かつ急速に平行進化が達成されるプロセスの研究に新た視点をもたらした点で大きな意義のある研究成果の報告である。

Cell Biology
Title: Impaired Flagellar Regeneration Due to Uncoordinated Expression of Two Divergent Actin Genes in Chlamydomonas
Author: Takako Kato-Minoura
Zoological Science 22 (5):571-577
推薦理由:クラミドモナスには二つのアクチン関連タンパク質が存在しているが、そのうちNAPの機能については明らかでなかった。本論文は、5’UTR-NAP+CrAのキメラ遺伝子をida5突然変異体に導入した細胞TF5では鞭毛再生時に異常が生じることと、鞭毛再生初期にCrAの発現量が増加していることなどを明らかにし、NAPが鞭毛再生に重要であることを示した価値の高い論文である。

Developmental Biology
Title: Expression Patterns of a twist-Related Gene in Embryos of the Spider Achaearanea tepidariorum Reveal Divergent Aspects of Mesoderm Development in the Fly and Spider
Authors: Kazunori Yamazaki, Yasuko Akiyama-Oda and Hiroki Oda
Zoological Science Vol. 22 (2): 177-185
推薦理由:本論文は、クモの一種、Achaearanea tepidariorumにおける発生(中胚葉)関連遺伝子、Twist, ならびにsnailの相同遺伝子を単離、発生過程におけるその発現を観察し、ショウジョウバエにおいて知られている発現パターンや機能と比較、考察したもの。相同遺伝子でありながら、これらのクモの遺伝子が発現する細胞系譜やパターン、その時間的変遷には、ショウジョウバエのものとは大きな違いがあり、進化における遺伝子の大胆な使い回し、その背景としての遺伝子制御の進化、さらにそのアウトプットとしての初期発生パターンの多様化があったことが示されている。クモの発生や、昆虫との比較を示す適切なスキーム、確実なデータに裏付けられ、いわゆるEvoDevoの領域にあって、重要な知見をもたらす論文である。

Endocrinology
Title: Involvement of Drinking and Intestinal Sodium Absorption in Hyponatremic Effect of Atrial Natriuretic Peptide in Seawater Eels
Authors: Takehiro Tsukada, J. Clifford Rankin and Yoshio Takei
Zoological Science 22 (1):77-85
推薦理由:心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、体内のナトリウムを減少させ海水適応を促進するホルモンである。本論文では,好塩性硬骨魚であるウナギを用いて,ANPが飲水を抑制するとともに小腸からのナトリウム吸収を抑制することにより血清中のナトリウム濃度を下げ海水適応を促進することを証明した。最近には珍しく,巧みな手術により覚醒状態の動物におけるナトリウムの動態を測定して定量的解析を行ったところが特に評価に値する。

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