平成26年度動物学会賞等選考報告

日本動物学会・学会賞等選考委員会 
委員長 竹井 祥郎

2014年5月21日(日)午後1時30分から4時まで、日本動物学会事務局において、日本動物学会賞、および日本動物学会奨励賞、および日本学術振興会育志賞候補者の選考委員会を開催した。委員会には、稲葉一男、七田芳則、住田正幸、高畑雅一、竹井祥郎、田村宏治、沼田英治(五十音順)の委員全員が出席した。それぞれの賞の選考規程に基づき、推薦書内容を詳細に検討したのち審議を行なった。その結果、全員一致で学会賞1名、奨励賞1名の会員を候補者として理事会に推薦し、育志賞候補者1名を理事会に提案することとした。

平成26年度日本動物学会賞

本賞に応募した5名の応募者は、動物学の多様な領域を代表する優れた研究者であり、選考規程にある「学術上甚だ有益で動物学の進歩発展に重要かつ顕著な貢献をなす業績をあげた研究者」の条件を満たしていた。選考は困難を極めたが、応募者の研究内容、研究業績、動物学の進歩発展への貢献度について詳細に審議した結果、次の1名の候補者を理事会に推薦することとした。

澤田 均(さわだ ひとし)
名古屋大学大学院理学系研究科付属臨海実験所・教授
研究テーマ「ホヤの受精機構に関する研究」

推薦理由

澤田均会員はホヤの受精機構、特に精子-卵相互作用に関与するライシンの作用機序と、自家不和合性機構に関する分子機構に関して顕著な業績をおさめた。まず、マボヤ精子から2種のライシンを同定するとともに、卵黄膜の精子レセプターを分解する酵素としてプロテアソームを特定した。次に、カタユウレイボヤ自家不和合性を引き起こす候補因子として個体間で配列が著しく異なる分子であるテミスを共同研究者と共に発見し、テミスを介した自家不和合性と精子内カルシウム濃度変化との関連を明らかにした。これらの発見は、獲得免疫系をもたない動物のアロ認識機構の理解に大きく貢献するとともに、植物における自家不和合性との共通点を指摘した点においても特記に値する。このように、澤田会員は我が国の受精研究を牽引するのみでなく、動物と植物の共通性にも言及することが可能な学問分野を創成した点において、国際的に高く評価されている。動物学の発展に大きく貢献した澤田会員の研究は学会賞としてふさわしいと判断し、全員一致で候補者として推薦する。

平成26年度日本動物学会奨励賞

本賞に応募した6名の応募者は、選考規程にある「活発な研究活動を行い将来の進歩発展が強く期待される若手研究者」の条件を満たしており、高い水準での選考となった。応募者の研究内容、研究業績、将来の発展性について詳細に審議した結果、次の1名の候補者を理事会に推薦することとした。

谷口 俊介(やぐち しゅんすけ)
筑波大学生命環境系下田臨海実験センター・准教授
研究テーマ「ウニ胚の神経形成および体軸形成メカニズムの解析」

推薦理由

谷口俊介会員は、動物の初期発生において重要な体軸形成と組織分化の研究について、ウニ胚を用いて精力的に進めている。谷口会員は、ウニ胚の前後軸と背腹軸が独立して形成されるものでなく、各細胞がこれら複数の軸情報を認識しながら互いにリンクすることにより、細胞分化と胚の体制が確立されることを発見した。さらに、長いあいだ未分化の割球からできあがっていると信じられてきたウニの永久胞胚が、正常胚の前端部に現れる神経外胚葉が拡大したものであり、永久胞胚の中に多くのセロトニン神経が分化していることを見いだした。これらの成果は、ウニを用いた発生学の研究に新たな方向性を打ち出した研究として、国際的に高く評価されている。このように、谷口会員のこれまでの研究は動物学にとってきわめて重要であり、将来のさらなる発展が大きく期待できるため、全員一致で候補者として推薦する。

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