| 第77回日本動物学会松江大会 動物学ひろば発表内容

1. アクアスから海の生き物がやってくる
橋本慶子 梶谷圭一(島根県立しまね海洋館「アクアス」)
アクアスから海の生き物たちがやってきます。アクアスで展示している約500種1万点の生き物の中から、地元島根県の海で採れた生き物を中心に展示します。普段何気なく目にする生き物でも発見がいっぱい。生き物の観察の仕方やコツ、おどろきの生態まで…。君も生き物博士になってみよう!
2 斐伊川水系の魚たち
佐々木興、古林敏彦 (島根県立宍道湖自然館「ゴビウス」)
宍道湖や中海では海から入ってくる魚と川にすむ魚の両方を見ることができます。というのは、この水域はもともと海であったところが湖になった「海跡湖」で、海とほぼ同じ高さのところにあり、斐伊川からの淡水と日本海からの海水が混ざり合う汽水域となっているからです。これらのことから、宍道湖や中海は海と川をつなぐ接点であるともいえます。宍道湖や中海ほどの広大な汽水域は世界的に見ても珍しいとされています。宍道湖自然館では宍道湖や中海など汽水域で見られる魚と、斐伊川をはじめとする島根県の河川などで見られる魚を展示しています。今回は、斐伊川水系で見られる代表的な魚を異なった塩分環境ごとに展示し、解説します。
写真:斐伊川水系で見られる魚(アカエイ)
3. 島根の野生動物たち
大畑純二、井上雅仁 (島根県立三瓶自然館サヒメル)
島根県には、約35種類の野生動物(哺乳類)が生息しています。コウモリやモグラなど小さな体の動物たちは、ツキノワグマやニホンジカなど大型動物たちのように人々からあまり注目されることがありませんが、それぞれが独自の世界の中で生活しています。彼らは、いったい、どのような生き方をしているのでしょうか。
4. 宍道湖とラムサール条約 〜自然と遊び,自然に学ぶ〜
井上明日香 ((財)ホシザキグリーン財団 宍道湖グリーンパーク)
(財)ホシザキグリーン財団では,宍道湖の西岸,出雲市に宍道湖グリーンパーク及び宍道湖自然館ゴビウスの管理・運営をしています。自然を感じて自然と遊び,自然から様々なことを学べるよう普及教育活動に関しても積極的に活動をしております。
また,昨年度宍道湖・中海がラムサール条約登録湿地に登録されたことをうけ,どちらの施設でもラムサール条約についての展示を行っております。その他にも定期的に行っている観察会では,条約に親しんでいただけるよう,常時話題を盛り込んで参加して頂けるようにしています。私たち財団の活動紹介とともに,より宍道湖に親しめる方法をお教えいたします。
5. かえると遊ぼう
矢尾板芳郎、花田秀樹 (広島大学大学院理学研究科附属両生類研究施設)
生命科学の研究を行うためには実験に用いる動物はとても重要です。日本政府は生命科学の発展のために平成14年から国家プロジェクトとして「ナショナルバイオリソースプロジェクト」を立ち上げております。両生類動物の代表として熱帯ツメガエル(Xenopus
tropicalis)が選ばれ、広島大学大学院理学研究科附属両生類研究施設が、その中核機関として認定されております。熱帯ツメガエルはゲノム情報が解明されている等、多くの長所を持っております。私たちは熱帯ツメガエルの改良によってより優れた実験動物を開発すると共に熱帯ツメガエルを無料で研究者に配布して、環境や発生学の研究の振興に貢献しております。
6. 日本一美しいカエルと透明ガエル:その保全と活用
住田正幸、倉林 敦、佐藤直樹、西岡みどり (広島大学大学院附属両生類研究施設)、
大海昌平 (名瀬市農林課)
本研究では、日本で最も美しいカエルと言われ、沖縄県と鹿児島県では天然記念物に、環境省レッドデータブックでは絶滅危惧
IB類に指定されている「イシカワガエル」について、両生類研究施設で培われてきた技術を生かし、実験室での人工増殖と飼育維持を試みた。
イシカワガエルは天然記念物であることから野外の個体を実験に用いることはできなかったが、人工繁殖技術を用いることにより、本種の効率的な保全と実験動物化が可能になった。さらに、人工交配技術によりニホンアカガエルで透明ガエルの開発に成功した。透明ガエルは生きたまま内臓透視ができ、新たな実験動物として利用価値が高いと考えられる。透明な実験動物は、これまでに魚類(メダカなど)に限られていたが、より哺乳動物に近い体制を持った両生類で、このような系統が開発されたことは注目に値する。
7. オオサンショウウオの繁殖と保護
桑原一司、足利和英、南心司 (財団法人広島市動植物園・公園協会安佐動物公園)
オオサンショウウオは国の特別天然記念物に指定された日本固有の両生類です。広島市安佐動物公園では、このオオサンショウウオの保護増殖を目的とした調査研究に取り組んできて今年で35年になります。野外調査で判明した繁殖期の行動を応用して飼育下繁殖に取り組んだ結果、1979年に飼育下繁殖に成功し以後継続的に繁殖しています。また調査地にしている生息地では、河川の改修に人工巣穴の設置を要請し、設置した人工巣穴での繁殖も毎年成功しています。
最近では地域の人たちが、オオサンショウウオを保護するため人工巣穴の管理をしています。こうして安佐動物公園と地域の人が協力し合って自然保護を進める取り組みが動き始め、オオサンショウウオの保護に明るい見通しがついてきました。今回はその内容の一部を紹介します。
8. かくれんぼしてるのだーれだ
平野優理子、池田英樹 (岡山大学大学院自然科学研究科)
この写真の中にはある生き物が隠れています。どこにいるかわかりますか?
自然の環境に生きる生物は、常に敵に襲われる危険と隣りあわせで暮らしています。そこで、多くの生き物は考えました。「どうやったら敵に見つからないように暮らすことができるだろう?」
ある生き物は毒を持ちました。ある生き物は、丈夫な家や隠れ家を作ることで身を守るようになりました。しかし、多くの生き物はもっと簡単で敵に見つかりにくい方法を見つけました。それは、周りの環境と同じような色や形になって隠れる方法です。動物学ひろばでは、沖縄県西表島の自然の中に隠れている生き物たちの様子をたくさんの写真で紹介します。
9. 小鳥はどうしてさえずるの?
渡辺愛子、ヘスラー ニール (理化学研究所・脳科学総合研究センター)
鳥がさえずる理由には、「なわばりを守るため」「求愛のため(写真・上)」の2つが考えられています。鳥は生まれながらにさえずれるわけではなく、人間の言語習得と同様に学習が必要です(写真・下)。まず若いうちに、おとなのさえずりを聞いて覚えます。次に自分でそのさえずりを声に出して練習し、上達させます。おとなは、自分のさえずりを耳で確認しながら一定に保ちます。このように、学習によって複雑な行動を習得する一例として、鳥のさえずり学習の研究は、スズメの仲間などを使っていろいろな国で行われています。私たちは、いろいろな手法を用いて、小さな鳥の脳がどうやって複雑な学習をしているのか、なぜ若い時期によく覚えるのか、成鳥ではどう維持するのか、また、さえずる時に相手がいると脳の活動がどう違ってくるか、ということの解明をめざしています。
10. 日本産ショウジョウバエ(バイオリソース)
和多田正義 (愛媛大学・理学部・生物学科)
ショウジョウバエといえば、普通はキイロショウジョウバエのことをさします。ショウジョウバエを用いて生物学の研究をしている研究者の大部分もキイロショウジョウ
バエを研究の材料としています。しかし、日本にはキイロショウジョウバエ以外に も、多くの種類のショウジョウバエが生息しています。キイロショウジョウバエにはないさまざまな特徴を持つショウジョウバエが南北に長い日本列島から採集することができます。愛媛大学(バイオリソースプロジェクト)では、それらの日本産ショウジョウバエのうち、57種類を飼育して研究のために維持・提供をしています。この展示では、ふだんは見ることのないさまざまな特徴を持ったショウジョウバエを、生きたまま見てもらう展示をします。
11. チョウを愛でる
山中 明、井上萌子 (山口大学・院医系 応用分子生命科学系)
普段、私たちの身の周りで見かけることのできるチョウ。「蝶々」といえば、ひらひらと優雅に飛ぶ姿を思い浮かべることでしょう。 ドイツの作家へルマン・ヘッセやシュナックは、蝶々に見せられ数多くの種類の蝶々の姿を描写しています。 勿論、日本でも、中納言物語『蟲愛づる姫君』の時代から、チョウは愛らしい生き物としてつづっています。
でも、じっくりと眺めてみた人は、そんなに多くはいないのではないでしょうか?今回は、皆さんの身近にいるチョウを展示します。どんなチョウと出会えるかはお楽しみに!
12. バーチャル自然観察会 〜色々な海の生きものたち〜
福本実穂子、伊勢優史、関本実、関藤守、杉井那津子、佐藤寅夫、東郷建
黒川大輔、吉田学、赤坂甲治 (東京大・院理・臨海実験所)
三崎は神奈川県三浦半島の西南端にあり、相模湾の深海を控え、黒潮に乗って様々な動物がやって来る生物の宝庫です。
東京大学三崎臨海実験所では、市民向けの自然観察会を通して、臨海実験所の周りに生息する様々な動物たちをデジタル画像や標本などとして保存し、データベース化する活動をしています。
今回、それらのデジタル画像や標本を用いて、「バーチャル」自然観察会を企画しました。また、さまざまな動物の骨格標本や樹脂胞埋標本を展示します。ぜひ、三崎の海の豊かさ、生物の多様性に触れてみて下さい。
13. ナメクジウオは、なめくじ?魚?
窪川かおる、水田貴信、丹藤由希子(東京大学海洋研究所)
ナメクジウオ Branchiostoma belcheri は100mより浅い、きれいな海の砂の海底に住んでいます。日本では、本州西南の太平洋沿岸、九州沿岸、瀬戸内海にいます。植物プランクトンをおもに食べ、飼育の餌は海産クロレラを与えています。目、耳、鼻はなく、光は嫌いで、まぶしいところからは逃げようとします。オスとメスは上に泳ぎながら産卵します。子供は浮いていて親になると海底にもぐります。
ナメクジウオは、「ナメクジ」でも、「ウオ」(=魚)でもありません。背骨がないかわりに、脊索という器官をもっています。背骨がない動物(=無セキツイ動物)の中で、背骨がある動物(=セキツイ動物)に一番近い系統関係にある動物です。5億7千万年前に私たちの祖先が登場したときも背骨ではなく脊索をもちました。ナメクジウオは、私たち脊椎動物の誕生の秘密を握っていると考えられます。
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