動物学会 男女共同参画委員会

動物学会男女共同参画委員会 委員一覧(2007.1.10更新)
中辻孝子委員長による05-06年活動総括(2006.12)

過去の委員会活動報告
 

 第7回動物学会女性研究者懇談会報告
 

動物学会男女共同参画委員会
                   塔筋弘章(記録担当・鹿児島大)
                   尾崎浩一(懇談会司会・鳥取大)
                   尾崎まみこ(男女共同参画委員長・神戸大)

 2007年9月20日弘前大学文京町キャンパスにおいて開催された日本動物学会第78回大会の初日、夕刻18時から「第7回動物学会女性研究者懇談会」が開かれました(主催:動物学会男女共同参画委員会、後援:男女共同参画学協会連絡会)。今回は「ポスドク問題を考える」というテーマを掲げ、公開関連集会として54名(男30名、女24名)の参加者を集めておこなわれました。
 初めに男女共同参画委員長である尾崎(まみこ)が、平成16年度で14854人いるポスドク(内、女性は21%)の就職難、高年齢化についての説明をおこないました。ポスドクの研究は、21世紀COEなどの競争的資金が主な支えとなっており、そのほとんどが独立行政法人、国立大学法人で研究をおこなっています。分野としてはライフサイエンスが40%超を占め、その中で女性は28%となっています。学位をとってポスドク生活に入る時期は、女性の場合は特に、家庭とキャリアの両方を確立する時期と重なり、ライフスタイルに切羽詰った問題が突きつけられます。この問題は渦中の研究者とその家族を心身ともに消耗させるだけでなく、後進の学生・院生の、研究者を目指そうとする気迫に水を差す結果になっている場合も少なくありません。
 続いて本年度の日本動物学会女性研究者奨励OM賞受賞者の北海道大学・佐倉緑さんに講演していただきました。受賞研究テーマは、「コオロギの闘争行動にかかわるクチクラ体表物質識別の神経機構の解明」です。佐倉さんは「6年間のポスドク生活を振り返って」という題でこれまでのご自分の研究生活について話して下さいました。佐倉さんは横浜市立大学で修士、北海道大学で博士の学位を取得、さらにポスドクとしては東京大学、チューリッヒ大学、北海道大学と、研究テーマを変えながら3つの研究室を渡り歩いてこられました。その間の研究の内容など、興味深いお話しでした。佐倉さんがその間に感じたポスドクのメリットは、研究だけに没頭できること、目的意識をはっきりさせやすいこと、研究者としての武器を磨く期間となり得ることなどがあり、デメリットとしては、身分や待遇が不安定なこと、結果をもとめられる故に長期にわたって落ち着いて研究ができないこと、研究室のボスの方針如何で自分の興味や自分が本当に知りたいことにこだわった研究ができないことなどがあるとのことです。特にチューリッヒで感じたこととして、スイスではパートタイムジョブが社会で整備されていて、研究者もそれが可能で、家庭と仕事を両立させやすいということを話されました。さらにはPhDの学生も、研究環境にも、金銭的な面についても、自立的な待遇が得られるとのことでした。
 また、今回は日本学術振興会から総務部・研究者養成課課長・河野広幸さんを招いて「特別研究員?RPDについて」のお話をしていただきました。河野さんは日本学術振興会のポスドク担当者であると、日本学術振興会学術システム情報センター主任研究員をしておられる佐藤矩行日本動物学会会長より紹介がありました。日本学術振興会では研究助成事業として科学研究費補助金、研究者養成事業としてSPD、PD、DC、RPD、海外特別研究員、そして学術国際交流事業として外国人研究者の受け入れ、日本からの派遣などをおこなっています。河野さんには日本学術振興会における特別研究員(ポスドク)制度の歴史をはじめ、現在の日本の女性研究者、ポスドクの現状、日本学術振興会としての取り組みについての講演をしていただきました。我が国の研究者における女性の割合は11.9%(昨年度)ですが、出産、育児、介護等の家庭の事情から、助教、准教授、教授とポストが上がるほど女性の比率が低くなります。そのために文部科学省は支援策を検討、研究に再チャレンジしたい人への支援、研究機関への支援、将来の進路を考える中高生への支援などをおこなっています。たとえば女性研究者支援モデル事業では20大学に3年間、年間2,000〜5,000万円を支援していることなどの説明がありました。さらに、出産や育児で研究中断した人のために創設された「特別研究員RPD」について、詳しい説明をして頂きました。このRPDは優れた男女のポスドク研究者が、出産、育児等による研究中断後に研究へ戻るための支援で、年間30名に対して2年間、月額364,000円と、審査の上、年間150万円の科学研究補助金が支給されるというものです。平成18年度、19年度は5名の生物学研究者が採用されているそうです。加えて日本学術振興会賞による支援、科学技術振興調整費プログラムによる支援、若手研究者の自立的研究環境整備促進テニュアトラック制の導入、科学研究費補助金による若手支援;若手研究S、A、B、スタートアップなどの支援策が紹介されました。講演終了後、現在のPD制度は人材を育てるためには短すぎるのではないかという意見や、テニュアトラック制度は実質的には出産育児は不可能ではという意見、教員や文部科学省系列の官僚などへの理系博士号取得者の採用を増やしてほしいという要望などが出されました。
最後に、佐藤会長に「日本動物学会としてポスドク問題を考える」というタイトルで講演をしていただきました。佐藤会長は、ポスドクの制度自体には問題はなく、あるとすればその採択率が少なすぎること、実際には「ポスドク問題」というより「オーバードクター問題」である、という見解を述べられました。これは大学院重点化、ポスドク1万人計画、大学教員定員の削減などが原因となっている悪しき部分のしわ寄せによってもたらされたもので、その解決には、現実に見合った大学院生数、特任教員の増加、教員の世代交代など、大学の改革が必要となってきます。さらにポスドク自身が大学への就職だけに拘泥せず多様なキャリアパスへの積極的な進出が求められてくるとのことです。学会としては、若手研究者の奨励、院生を対象とした奨励賞、海外派遣、より広い活動の場の提供、就職情報のさらなる提供、助教の人事は学会員から選ぶよう要望する、など取り組んでいきたいということです。また、これらの問題に対して、学会員から具体的な案を上げて要望を出して欲しい。会長→日本学術振興会→文部科学省と要望を伝えるルートはすでにできているので必ずフィードバックされる、ということです。
 講演終了後に演者への質問も兼ねて、ディスカッションをおこないました。ここではフロアからも多くのご意見が出されました。
出産・育児が終わって運よくテニュア職についたとしても、人心地ついたころ、親や舅姑の介護・見取りという壁が立ちはだかります。この時期の女性への支援もどうにか考えてほしいというフロアからの意見に対し、具体的な提案をしてくださいという会長のご意見がありました。学振特別研究員になれば、科研費も申請できるが、何もない平院生が申請できる研究助成がないので何とかしてほしいという意見に対しては、提案してみようという会長のお言葉。等々、なかなか盛り上がりのあるディスカッションとなりました。最後に、テニュア職に就いた女性研究者は、現在、少数であるにもかかわらずありとあらゆる場に引っ張りだされ疲弊しつつある。なんとか、ここを持ちこたえつつ、まず、女性研究者の裾野を広げ母数を増やしたいという発言で締めくくられました。特に今回はフロアからの発言が多く、日本学術振興会への質問、要望がいろいろ出されました。3時間にわたった懇談会の終了後には近くのお店に席を移し、演者の皆さんを囲んでの懇親会もおこないました。
 最後になりましたが、懇談会開催のためにお世話下さいました弘前大会準備委員会、動物学会事務局の皆様にお礼申し上げます。


第4回 男女共同参画学協会連絡会シンポジウム
"育て、女性研究者!! 理工系女性研究者支援の新しい波"
分科会B「新たな活躍の場をもとめて−フロンティアをめざす研究者」報告

動物学会男女共同参画委員
 箕浦高子(東京大学)

2006年10月6日に、東京大学山上会館において表記のシンポジウムが開催されました。動物学会は分科会Bの企画を担当し、中辻孝子男女共同参画委員長と委員の鷲谷節子、箕浦高子の3名がオーガナイザーを務めました。全体会やポスターセッション等、シンポジウムの全体報告書は、後日、男女共同参画学協会連絡会のHP(http://annex.jsap.or.jp/renrakukai/index.html)に掲載される予定ですが、その中から分科会Bについて、以下に転載・報告させていただきます。なお、本分科会でご講演をいただきました、橋本裕子さん(日本科学未来館)の対談記事がBTJジャーナル(バイオ研究者のキャリア/スキルアップマガジン、http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/)2006年10月号に掲載されています。医学系大学院博士課程在学中の女子学生が、橋本さんのこれまでのキャリアチェンジの経験や育児と仕事との両立などについてインタビューする、たいへん興味深い記事です。


分科会Bは、テーマを「新たな活躍の場をもとめて−フロンティアをめざす研究者」とし、日本動物学会が担当した。大学院重点化やポスドク一万人計画で研究者人口が増える一方、アカデミアへの就職事情は年々厳しく、若い世代の将来への閉塞感は否めない。異分野での可能性を見出すべく、本分科会では、生物学のバックグラウンドを持ちながら現在はノンアカデミアで活躍されている3人の方々に講演をお願いした。村瀬祥子氏(理学博士・現(株)バイオマスター 取締役CSO)は、ポスドク2年の後ベンチャーキャピタル(VC)に転向した。バイオ系ベンチャー企業(BV)を育成支援するVCでは、専門的知識を生かした技術的助言はもちろん、「目利き」の能力が問われる。研究者の視点からユーザーの視点へ、巧みな切替えが必要だったという。現在は多くのBVがあり、内容も企業としての成熟度も様々だ。安定した企業で研究者になるか、創成期にクリエイターとして参画するか、自分の適性に合わせた選択が可能らしい。アカデミア以外の道に進むと「ドロップアウト」と見られるのでは?という問いには、我々のBVに対する「誤解」を指摘された。多くのBVではシーズを育てるため、ある程度広い範囲で研究を展開しており、そのための投資はむしろアカデミアよりも潤沢だ。BVでの研究は我々の想像以上に自由度が高いらしい。会場からは、そのような魅力的な研究環境ならば、インターンシップや就職説明会等で積極的にPRしてほしいという声が出た。榎木英介氏(博士(医学))は、大学病院医師として勤務する傍ら、学生時代に設立したNPO法人サイエンスコミュニケーションの代表理事として、研究者をめぐる様々な問題への提言や情報提供などの活動をされている。学協会連絡会でも政策提言は主要活動の一つであり、その方策について質問が挙がった。榎木氏は「政府の関心は高い。勉強会等で常にアンテナを張り、また提言だけで終わらせない努力も重要」とコメントされた。橋本裕子氏(理学博士・現 日本科学未来館 科学技術スペシャリスト)は、9年間のポスドクの後、40才でサイエンスライターに転向、5年後に現職に移られた。未来館には企画やインタープリターなどの任期職がある。生物系の出身者、女性が多く、その後は研究所広報や博物館等に転職するらしい。異なる分野の3人の話を伺ううちに「コミュニケーション」と「育成」という、共通のキーワードが見えてきた。また、「相撲部屋方式」というアイデアが共感を呼んだ。力士は修行で相撲とちゃんこ料理を同時に習う。ちゃんこ屋は引退後の生活の糧だけでなく、その地域の有望な子供を見つけ中央に送る「次世代育成基地」としても機能する訳だ。未来館などが先駆けて、企業や地方とも連携し、さらには育成の進む科学技術インタープリターも活用して「科学ちゃんこ」を実現すれば、同時に様々な問題への解決の糸口にもなるかもしれない。
 


 動物学会 男女共同参画委員会について
 

日本動物学会では、2007年から新たに置かれる男女共同参画担当理事が委員長を兼ねた動物学会男女共同参画委員会が発足いたします。

委員長
 尾崎 まみこ
 
委員
 尾崎 浩一
 木下 充代
 笹川 浩美
 塔筋 弘章
 豊田 ふみよ
 藤原 宏子
 松下 敦子
 箕浦 高子

 現在、新たな委員会のメンバーには、以上9名が決定しております。今しばらく時間をかけて、性別、地域のバランスのとれた委員会にしていきます。

 これまでの委員会の活動の発展的継続を土台として、個々の取り組みが、動物学会員の目と意識に留まるよう働きかけてゆきます。一人一人が無関心ではいられない問題を共有するところからジェンダーとジェネレーションの壁を限りなく透明に解消少し、男女共同参画の環境づくりの知恵を持ち寄りましょう。動物学会男女共同参画委員会は他の学協会と連携してその実現を目指す核です。

(尾崎まみこ)

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男女共同参画委員会委員長