日本動物学会 第96回名古屋大会 開催後記

2025年(令和7年)9月4日(木)から6日(土)にかけて、第96回日本動物学会大会を「ポートメッセなごや」にて開催しました。

 今回学会員は1,013名の参加があり、これに加えて高校生発表による参加者351名(98演題)がありました。また動物学ひろば(17企画)では一般来場者も含めて550名以上の参加がありました。一般公開講演会では3演題の講演があり50名以上の参加がありました。研究発表はポスターを主体として行いましたが、そこでは492演題の発表があり、本部企画シンポジウム(ナリシゲシンポジウム)では5演題、公募シンポジウムでは99演題(17企画)、関連集会では22演題(6企画)の発表がありました。

 動物学会大会は例年郷土色豊かな場所で大学を利用して行われることが多い中で、この話を受けたときは正直、「都会の名古屋でなぜ?」と思いました。ちょうど名古屋大学ではキャンパス内で大きな工事が行われており、その終了時期も不明だったこともあって、思い切って大学を飛び出し、観光としてはあまり訪れることもないであろう、しかし日本経済を支える名古屋を象徴する自動車積出の現場、金城ふ頭の「ポートメッセなごや」を会場としてみました。ただ交通手段があおなみ線一本しかありません。名古屋駅から24分という場所で不便をおかけしたと思いますが、結果的には下記のように多くの方に参加くださり、大会実行委員としてはとても嬉しく思っています。

 今年は開催日が近づいても晴天が続いて酷暑が収まる気配がなく、大会直前まではむしろ猛烈な暑さを心配していました。ところが、前日にどこからともなく台風が突然出現。これには驚きました。台風の動向と交通事業者の対応にハラハラする状況となりましたが、結果的には大会周辺は風雨もそれほど酷くはならず、「あおなみ線」も通常運行してくれたために、大会は滞りなく実施することができました。ただ日本国内では交通の停止や遅延もあり、苦労して参加された方々にはお礼を申し上げるとともに、また参加できなかった方がいらっしゃったことはとても残念に思っています。

 日本動物学会の特徴はさまざまな動物を用いた多様な現象の多様なレベルでの解析にあると思いますが、今回は広大な展示場を使ってのポスター発表を、日にちを変えて2回実施しました。「じっくり話を聞くことができた」「違う分野の発表も見て回る余裕があった」などの感想も耳にすることができ、日本動物学会ならではの発表と議論を、空間的にも時間的に余裕を持って楽しんでいただけたのではないかと思っています。

 今大会ではポスター発表と同じ屋根の下ということもあり、企業展示にも力を入れました。学会員の研究にもなんらか資することのありそうな企業に協賛を依頼し、より気安く学会員と接触ができるように、動線を意識したブース配置をとりました。企業によるミニ講演会や、ランチョンセミナー開始前の企業プレゼンテーション、さらには例年のスタンプラリーなども企画しましたので、新たな技術や解析方法など、何らか新しい技術と解析の出会いがあったことを願っています。

 またひとつの屋根の下、ポスター発表とは区画を分けながらも、一般の方が参加できる動物学ひろばやクラフト展示、動物クッキー販売と一体感ができるように工夫してみました。東山動物園や名古屋港水族館などによるミニ講演会も同じ場所で開催しました。今年は98演題に及ぶ高校生による研究発表も展示場で行われ、将来を担う高校生には活気のある研究発表の場を体験してもらえたのではないでしょうか。食事混雑の不安もあったため、3台のキッチンカーを呼んだのも今大会のひとつの特徴だったかもしれません。

 歴史資料展示では思わぬ収穫がありました。尾張三河の動物学の特徴と流れ(主に水生動物の研究)を俯瞰する試みを行ったのですが、名古屋大学にはそれを特徴付ける3名(伊藤圭介氏、奈良坂源一郎氏、山本時男氏)の方のオリジナルの図譜や資料が残っていることが発見できたことです。企画した委員も予想していなかった発見で、この結果は名古屋大会HP(https://www.zoology.or.jp/annual-meeting/2/drawing-exhibition/)および中部支部ページ(https://www.zoology.or.jp/branch-chubu)にアーカイブとして残すことにしています。

 従来とは違う展示館での開催で、当初の予定通りには行かずさまざまなことがおきました。しかし実行委員の皆さまの知恵と努力で乗り越えることができたことはとてもありがたく思っています。そして何より、この大会を発表と議論で盛り上げてくださった学会員の方々には心よりお礼を申し上げます。

 次は涼しい札幌です。暑い名古屋からバトンを引き継ぎ、また活気のある大会となることを願って止みません。

日本動物学学会 第96回大会(名古屋大会)
実行委員長 田中 実(名古屋大学 大学院理学研究科)