2020年 会長年頭挨拶

2020年1月22日
公益社団法人 日本動物学会
会長 岡良隆

「真に持続可能な動物学会を目指して」

2020年の年頭に当たり、一言ご挨拶申し上げます。

 昨今、SDGsと言う言葉を日常生活においても頻繁に耳にする事があり、大学等でも概算要求を始めとする何かのプロジェクトを提案しようとすると、必ずと言って良いほど、SDGsのいずれに該当するのかを明確に書くようにと指示されます。しかし、ここでふと立ち止まって、私たち動物学会の会員にとって、真に持続可能な(sustainable)動物学会を目指すために、私たちは今何をすべきなのだろうか、と言うことを考えてみたいと思います。

 去年年頭のご挨拶にも書かせていただいたように、日本動物学会は、最初に東京大学生物学会として発足した1878年以来、既に創設140年を迎えた、国内外でも際だって長い歴史を持つ生物科学系の学会です。動物学会は、E.S.モース、谷田部良吉といった学会成立の音頭を取る人物の存在と努力、そして帝国大学を中心とする教授陣が経済的支援をすることにより成立したとはいえ、比較的短期間で、同窓会的集まりから全国に展開していきました。これには、当時の日本国内に動物学に関する社会的な関心の高まりがあり、研究者のみならず一般の人達にも動物学に対する興味と関心があったためと言われております。このことを反映してか、日本動物学会は、かなり初期の頃から現在に至るまで、全国7つの支部組織を持ち、それぞれの支部が特色を持つ支部大会を始めとする独自の活動を行いながら、その総体として学会が成立しており、学会大会も各支部交代で担当している、というボトムアップの構造を維持しています。現在の国内の学会組織にあっては、こうした組織形態や活動はむしろ極めて希ですが、それこそが日本動物学会の大きな特色であり、かつ、日本動物学会がこれまでの長い歴史を持ち、活発な活動を続けてこられた原動力であると思います。

 しかしながら、これまで長い歴史を積み上げてくることができたから、これからもこのままのやり方で歴史をさらに積み重ねていけるか、というと、それはさほど容易なことではなく、たゆまぬ努力と改革無しには難しいと思います。その中でひとつ重要なこととして、学会活動を支える支部の各種委員や本部の理事、支部代表委員などを始めとする役員の皆さん、そして、毎年の学会大会を運営して下さる各支部の大会実行委員会の皆さん、等々多くの皆さんが健全な形で自然に新陳代謝していく必要があると思います。学会大会の前日に実施される理事会・理事懇親会に、理事・監事だけでなく各種委員会委員の皆さんにもオープンに参加していただけるようにしてあるのは、次世代の理事として活躍してくださるような会員に理事会で議論していることを肌で感じてもらいたいと考えているからです。ですから、各種委員会に所属されることになりましたら、是非積極的に理事会・理事懇親会に出席し、特に、懇親会などでは会長や理事を捕まえて、いろいろとお話ししてくださるよう、お願いします。また、若手会員の皆様には、委員になられたら、ぜひ動物学会のボトムアップの活動に積極的に参画していただき、その活動を通じて感じたことや気づいたことを、周りの委員長や理事(委員長は原則理事)にお伝えいただき、大会時の理事会の時にそれを直接理事会メンバーにもお伝えください。理事会に参加していただくとわかりますが、現在の理事会は実にオープンな雰囲気ですから、誰が何を言っても大丈夫です。

 最後になりましたが、2019年の活動と2020年の活動予定に関して1つだけ取り上げてご報告いたします。

動物学会は新たに助成事業を開始します

 既に会員の皆様方にはお伝えしておりますように、動物学会の会員であった茗原眞路子博士のご遺族より動物学会にいただいた多額の寄付金を基金として、新たな助成事業を開始すべく、極めて手間暇のかかる定款改正を会員の皆様方のご協力により無事に済ませ、その後も、事務局を中心として、内閣府と数え切れないほどのやりとりをして、ようやく1月22日に認定を受け、動物学会が助成事業を新たに開始することができる運びとなりました。この間に決まった大事な事としましては、公益社団法人としての助成事業にふさわしく、規程の中で、助成対象を動物学会会員に限るのではなく、「基礎生物学(動物学)の優れた研究を行う者で、当助成金の他に十分な研究費を得ることの困難な者」としました。これは、茗原眞路子博士の「基礎的な動物学の優れた研究を行っているが研究費には恵まれない方に研究助成を行いたい」、という御遺志に沿う物であると私たちは信じております。これから4月上旬までの間に応募要領や応募の書式などを整えて準備し、4月以降可及的速やかに募集を開始できるように致します。

 また、2020年9月に予定されている動物学会米子大会における本部企画は、この第1回助成対象者となられる3名の方の講演会を予定しております。今後、このような新規事業を中心として、動物学会の活動がますます公益社団法人にふさわしい物となり、会員の皆様にとっても、一般社会にとっても、動物学会の活動が広く認知され、基礎的な動物科学の振興に寄与できることを目指したいと考えております。

 記念すべきOlympic Yearにも重なる2020年が、会員の皆様方にとっても充実した素晴らしい1年でありますよう、心からお祈りいたします。

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