鳥はいかに進化しているか―Futuyma先生の進化生物学講座 書評

鳥はいかに進化しているか―Futuyma先生の進化生物学講座 書評

Douglas J. Futuyma 著、的場知之 訳、丸善出版、2025年11月出版、336頁、本体8,400円(税別)

本書は、進化生物学者の大御所のひとりDouglas J. Futuymaの「How Birds Evolve: What Science Reveals about Their Origin, Lives, and Diversity」の訳本である。進化学の基本的な概念の説明から鳥類に関する幅広い進化学的トピックがカバーされている。

第1章は、鳥類を例として進化生物学の概要が紹介されている。第2章は、進化生物学の肝となる系統樹の説明がなされている。系統樹とは何か、分子系統樹の導入など具体例を交えてわかりやすく説明されている。第3章では、始祖鳥以降の鳥類の進化史について、化石記録から分子系統樹、形態比較によって詳細に解説されている。第4章では鳥の個体群はどう変化し適応するのかと題し、鳥類の様々な進化学的研究を題材として、自然淘汰や適応について説明されている。第5章では、種内の多様性に焦点を当て、どのような仕組みで種内の多様性が維持されるのか、遺伝子流動や負の頻度依存淘汰、性拮抗淘汰が当てはまる鳥類研究の例を挙げ説明されている。第6章では、適応はどう進化するかと題し、特殊な食性の獲得や低酸素など特異な環境での生存に生化学的適応が重要であること、特徴的な羽や足、くちばしがそれぞれの種においてどのように獲得されてきたのかなどについて説明されている。第7章では生活史に焦点が当てられ、特に産卵や子育てのあり方について進化的考察がなされている。第8章では性淘汰に焦点が当てられ、性的形質の進化について論じられている。第9章では群れや共同繁殖などの社会行動に関して記載されている。第10章では種分化に焦点が当てられ、種とは何か、種分化はどのように起きるのかに関して説明されている。第11章では系統地理学の観点から鳥類の進化について説明されている。第12章では絶滅と保全、進化可能性について言及されている。

本書の1番の特徴は、説明のわかりやすさにある。大学学部生で習う授業レベルの生物学的知識があれば、たとえ鳥類の進化学的知見を知らなくても十分理解でき読み進めることができるだろう。また進化生態学に関連する様々な隣接分野(例えばゲノム解析など)も随所にみられ、それが故に他分野の研究者も取っ付きやすいと思われる。加えて原書自体の説明の上手さだけでなく、訳の丁寧さも垣間見ることができる。日本語表現についても比較的平易であり、進化生物学を専門としなくとも十分理解できる言い回しになっている。このように本書は、鳥類の例を介して進化生物学とその関連項目を幅広い読者が理解できるように書かれていることから、進化生物学への導入として非常に価値の高い本であるといえる。

左倉和喜(基礎生物学研究所 進化発生研究部門)

鳥はいかに進化しているか―Futuyma先生の進化生物学講座 書評(PDFファイル)

お知らせのカテゴリ一覧

月別アーカイブ

最新のお知らせ

寄付のお願い

日本動物学会第97回大会

PAGE TOP