第603回日本動物学会北海道支部講演会の案内(2025年2月7日)

日本動物学会北海道支部 第603回支部講演会

日時:2025年2月7日(金) 17時~18時半
場所:北海道大学 理学部5号館4階 407号室

演者:山口真二 博士(帝京大学薬学部 教授)

演題:再生を促進する細胞の発見~ヤマトヒメミミズの再生モデルとしての有用性~

要旨:ヒトは、損傷により失われた器官を再生することができない。一方、小断片から体全体を再生する(全身再生)ことが可能な再生能の高い動物も存在する。「生物種による再生能の違いが、どのような細胞・分子基盤によるのか?」、不明な点が多い。
環形動物ヤマトヒメミミズは、全身再生の能力を有する。再生時には切断端に未分化細胞の塊である「再生芽」を形成し、失われた器官を作る材料とする。講演者は、比較RNA-seq解析により、再生芽が形成される際に、最も発現上昇する転写因子としてsoxC を同定した。ヤマトヒメミミズで新規に構築したRNA干渉を用いてsoxC 発現を抑圧すると、再生芽が小さくなったことから、soxC が再生芽形成に必要であることが分かった。次に、再生芽形成に伴う発現解析の結果、soxC 発現細胞は、次第に再生芽に集積し、再生芽のほぼ全体を占めることが判明した。これらのことから、soxC 発現細胞が再生芽に遊走する「再生芽前駆細胞」であるという概念を提唱した(Nat.Commun,(2024))。さらに、再生能が高い脊椎動物であるツメガエル幼生(オタマジャクシ)を用いて、尾の切断端に出来る再生芽において、soxCオルソログの発現を検討した。驚くべきことに、soxC発現細胞は、オタマジャクシの再生芽でも集積することが示された。これまで無脊椎動物(ミミズ)と脊椎動物(カエル)の再生芽が形成される仕組みは全く異なると考えられていたが、soxC発現細胞は共通に集積することから、器官再生は動物種を問わない共通の仕組みによっておこる可能性がある。肝臓をのぞき高い再生能力をもつ器官は存在しないヒトにおいても、 soxCは存在していることから、soxC発現細胞(=再生芽前駆細胞)の細胞動態を明らかとしていくことで、新規創薬や再生医療にも新たな視点を与えることが期待される。

第603回日本動物学会北海道支部講演会

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