日本動物学会会員各位
日本動物学会第95回長崎大会は、2024年9月12~14日(木~土)に長崎大学文教キャンパスにおいて開催されました。参加者数は大会791名、高校生発表144名、動物学ひろば250名以上、一般公開講演会126名でした。発表件数は、一般講演392題、シンポジウム・関連集会は本部企画(ナリシゲ)シンポジウムを含め全24企画(116演題)でした。また、高校生発表49演題、動物学ひろば15企画、一般公開講演会4演題を実施しました。9月中旬とは思えない猛暑のなか日本の西端・長崎まで全国から遠路はるばる多くの皆様にお集まりいただき、3日間にわたり早朝から夜遅くまで研究論議に花を咲かせていただきました。実行委員を代表して、心より厚くお礼申し上げます。
長い歴史をもつ年次大会ですが、長崎での開催は初めてのことでした。長崎県には基礎生物学の学部・学科を有する大学が存在しないためか、学会員は学生を含めて例年15名前後とかなり少なく、当初開催の打診を受けた際は大いに戸惑いましたが、他県の九州支部会員の温かいご支援のもと長崎大会が実現しました。会期中は「初めての長崎を楽しんでます」、「長崎は良いところですね」という参加者のお声を少なからずいただき充実感を覚えました。
本大会は、第92回米子大会(コロナ禍でオンラインへ変更)や昨年の第94回山形大会など、いわゆる地方都市での開催という近年の傾向に沿ったものでした。日本の地方都市はほぼ例外なく人口減少に歯止めがかからず、弱体化に喘いでいます。長崎県でもこうした状況の打開策として観光に注力しており、本大会のように若い世代の参加が多いイベントの開催は、県にとって貴重なアピールの機会となります。このように地域活性化という意味でも、地方都市での大会開催は大変重要であると個人的には考えます。ただし、上述のように近隣地区の会員の支援なくして開催はほぼ不可能であり、支部全体で実施体制を整える必要があるでしょう。
長崎大会は、長らく続いたコロナ禍から真に解放された大会でした。我々はマスク、手指消毒、換気などといった感染対策を一切考えずに準備を進めることができました。一方、諸事情から現地参加が難しい会員のために、コロナ禍で定着した技術を活用し、オンライン参加の機会を設けました。昨年の山形大会での経験を踏まえ、オンライン発表は1会場に集約し、オンライン参加者に対してすべての会場の様子をライブ配信する方式を採用しました。これは現地参加者への影響をほぼ無視できる点で長けていましたが、舞台裏では通信上のトラブルが何度も発生し、オンライン参加者にご迷惑をかけてしまいました。専門的技術をもたない我々が数百もの演題を扱う学会をオンラインで企画・実施する難しさを改めて実感しました。
高校生発表でも多くの若人が全国から集結し、ポスター会場は彼らと聴衆の熱気であふれかえりました。高校生発表で個人的に感心したのは、テーマが独創的であること、プロ顔負けの高度な調査解析手法を用いていること、そしてコンテンツが明解でデザイン的にも優れていたことでした。彼らの中から必ずや日本の動物学の将来を支える人材が現れることを確信した次第です。ただ一点残念だったのは、地元長崎を含め九州沖縄地区からの参加者が少なかったことです。我々は以前からこの状況を把握していたので、1年以上前から高校関係者を通じて呼びかけを行ってきましたが、演題数は期待していたほど伸びませんでした。ともあれ、九州沖縄地区では今回参加してくれた高校を含め、今後も呼びかけを継続することが重要と考えます。
公開イベントとして開催された動物学ひろばは昨年の山形大会と同様に大盛況でした。興味深い多様な動物を揃えてくださった出展者の皆様のご尽力に心より感謝いたします。また、我々も地元の教育委員会にはたらきかけ、小中学校の生徒さんへチラシの配布をお願いしたことが功を奏したのか、親子連れが多く訪れてくれました。一般公開講演会は、水産業で名を馳せる長崎ならでは企画として、水産業と動物学との密接な関係をテーマとしました。こちらも幅広い世代から多くの参加者があり、活発な議論が交わされました。
懇親会は受入上限の400名をわずかに超える参加者を長崎駅近隣のホテルへお迎えして盛大に行われました。長崎県産の日本酒と焼酎を、地元酒造メーカー(大島酒造様)の特別な計らいで多数取り揃えていただきました。また、長崎県には国と県の無形民俗文化財に指定されている中国伝来の龍踊(じゃおどり)を愛好する団体が数多くありますが、今回は長崎大学龍踊部に演舞を披露してもらいました。勇壮なパフォーマンスに宴は大いに盛り上がったことと思います。
設営を含めた怒涛の4日間は瞬く間に過ぎ去り、本稿を書いている今、会場となった夏季休業中のキャンパスは再び静かになりました。個人的な想いで恐縮ですが、こうして達成感に浸れるのは、大会がすべて予定通り無事終えることができたおかげです。本大会の開催にご尽力いただいたすべての皆様に改めて厚くお礼申し上げます。特に、協賛企業の皆様と日本学術振興会には多大なご支援を賜り、共催の長崎大学には会場をご提供いただきました。また、寺北会長、志賀新会長を始めとする学会役員、佐藤優子様を始めとする学会事務局、そして昨年度の山形大会実行委員の皆様からは、数えきれないほど多くのサポートとアドバイスをいただきました。
来年は中部支部が担当し名古屋での開催となります。次回も今回に増して多くの皆様をお迎えして素晴らしい大会となることを祈念して、次期実行委員会の皆様へバトンをお渡しいたします。
日本動物学会第95回長崎大会実行委員長
岡田二郎(長崎大学環境科学部)