平成26年度動物学会賞等選考報告
日本動物学会・学会賞等選考委員会
委員長 竹井 祥郎
平成26年度日本動物学会学会賞
本賞に応募した5名の応募者は、動物学の多様な領域を代表する優れた研究者であり、選考規程にある「学術上甚だ有益で動物学の進歩発展に重要かつ顕著な貢献をなす業績をあげた研究者」の条件を満たしていた。選考は困難を極めたが、応募者の研究内容、研究業績、動物学の進歩発展への貢献度について詳細に審議した結果、次の1名の候補者を理事会に推薦することとした。
澤田 均(さわだ ひとし)名古屋大学大学院理学系研究科付属臨海実験所・教授 研究テーマ「ホヤの受精機構に関する研究」
推薦理由 澤田均会員はホヤの受精機構、特に精子-卵相互作用に関与するライシンの作用機序と、自家不和合性機構に関する分子機構に関して顕著な業績をおさめた。まず、マボヤ精子から2種のライシンを同定するとともに、卵黄膜の精子レセプターを分解する酵素としてプロテアソームを特定した。次に、カタユウレイボヤ自家不和合性を引き起こす候補因子として個体間で配列が著しく異なる分子であるテミスを共同研究者と共に発見し、テミスを介した自家不和合性と精子内カルシウム濃度変化との関連を明らかにした。これらの発見は、獲得免疫系をもたない動物のアロ認識機構の理解に大きく貢献するとともに、植物における自家不和合性との共通点を指摘した点においても特記に値する。このように、澤田会員は我が国の受精研究を牽引するのみでなく、動物と植物の共通性にも言及することが可能な学問分野を創成した点において、国際的に高く評価されている。動物学の発展に大きく貢献した澤田会員の研究は学会賞としてふさわしいと判断し、全員一致で候補者として推薦する。