動物学会賞 2012(平成24)年度受賞者

社団法人日本動物学会
学会賞等選考委員会 委員長 高橋孝行

平成24年度日本動物学会学会賞

  応募者は7名であった。動物学は広範な学問領域からなるが、ほとんどの応募者はそれぞれの領域を代表する優れた研究者であり、選考規程にある「学術上甚だ有益で 動物学の進歩発展に重要かつ顕著な貢献をなす業績をあげた研究者」の条件を満たしていた。その結果、高い水準での審議となった。選考は困難を極めたが、応募者の研究内容、研究業績、動物学の進歩発展への貢献度について詳細に審議した結果、2名の候補者を理事会に推薦することとした。

神谷 律(かみや りつ)・東京大学大学院理学系研究科・元教授
対象となった研究テーマ 「鞭毛運動におけるダイニン機能とその調節機構の研究」

推薦理由
  神谷律会員は、ほぼ全ての真核生物に保存されている鞭毛運動に関する卓越した研究により、数多くの知見を発見し学術的に重要な成果をあげてきた。鞭毛はよく知られている構造パターン(9+2構造)をもち、根本で起こった屈曲が波として先端方向に繰り返し伝播するという複雑な運動を行う。その背景にある制御機構の本質は未解明であったが、クラミドモナスを実験材料として、様々なダイニンに異常をもつ変異体株を単離・解析するというアプローチにより、多様なダイニン分子を見出すとともに、変異株の運動性の変化を解析することによって、周辺微小管の単純な滑りでは実現できない波動運動が、多様なダイニンの働きによって実現しているという画期的な発見にいたった。鞭毛運動の研究分野において、運動を担う構造の分子生物学的研究で常に世界を先導してきた。数多くの研究成果が国際的一流誌に掲載され、日本の鞭毛運動の研究が世界をリードする水準にあることを立証した。「動物に普遍的に存在する鞭毛運動の分子機構の理解」を著しく進展させた神谷律会員の研究は学会賞としてふさわしいと判断し、候補者として推薦した。

沼田英治(ぬまた ひではる)・京都大学大学院理学研究科・教授
対象となった研究テーマ 「動物の生活史を調節する環境要因および生物時計の研究」

推薦理由
   沼田英治会員は,昆虫を主要な材料として休眠、光周性、季節適用および生物リズムの研究に従事し、数多くの知見を発見し学術的に重要な成果をあげてきた。様々な昆虫を用いて、日長、温度、餌条件などの要因が休眠に及ぼす影響について詳細な調査を行い、環境要因と休眠・生活史の関係についての理解を深めた。 また、昆虫の光周性に時計遺伝子が関与していることを初めて実証した。さらには、季節変化に対応した約1年周期の生物リズムである「概年リズム」の基盤となっている概年時計の存在や、さらには、概日時計とは仕組みの異なる約12時間周期のリズムである「概潮汐リズム」の存在を明らかにした。「概年リズム」や「概潮汐リズム」の発見は世界に先駆けるものであり、成果の公表後には、これらのリズムを制御する生理機構の実体解明に向けた新たな研究が展開されている。数多くの研究成果が国際的一流誌に掲載され、世界レベルで研究をリードしてきており、我国の動物学の学問水準の高さを世界に示すものである。動物学の発展に大きく貢献した沼田英治会員の研究は学会賞としてふさわしいと判断し、候補者として推薦した。

 

 

 

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